ワインの”マリアージュ”とは?基本のマリアージュと具体例の解説

【最終更新日】2022年10月12日

こんにちは。ワインブックスの前場です。

今回は、ワインブックスチャンネルでもよく聞くキーワード「マリアージュ」について、その基礎知識の解説です。

長いコンテンツではありますが、基礎知識から、その考え方と応用まで生かせる内容になっています。

お時間のある時に、ぜひ最後までお読みください。

 

 


 

 

ワインの世界でよく「マリアージュ」という言葉を聞くと思います。最近では「ペアリング」ともいうことが多いです。

 

マリアージュ(Mariage)とは「ワインと料理の相性」のことを指します。

「このワインはこの料理といいマリアージュだ」という場合は、「ワインと料理がよく合っている」という意味で使います。

 

もともとは、マリアージュはフランス語で”結婚”の意味ですので、なんともロマンチックな言い回しではないでしょうか。

お料理とワインの組み合わせは、結婚するカップルのようにお互いがお互いを引き立てあう、ということなのでしょう。

 

ここでは、このワインと料理の結婚「マリアージュ」の基本を知りましょう。

 

ワインと料理のマリアージュ

大きく分かれる二つのスタイル

料理とワインのマリアージュは、ソムリエや専門家、または愛好家の方でも二つのスタイルに分かれることが多いです。

 

①【伝統的なマリアージュ】

一つ目は伝統を重視し、その地域や歴史を重んじるマリアージュ

 

②【クリエイティブなマリアージュ】

もう一つが伝統とか歴史よりもワインと料理のみにフォーカスするマリアージュ

 

本当に乱暴にざっくりいえば、この二つに分かれます。

それぞれを見てみましょう。

 

①伝統的なマリアージュ

①のスタイルは料理やワインの地方を合わせたり、伝統や歴史を重んじてマリアージュを検討します。

「この料理はブルゴーニュの郷土料理だからワインもブルゴーニュのワインを合わせる」大体こんなイメージです。

 

たとえばフランスの現地のレストランで現地の名物料理を楽しんでいるお客に、そのお店のソムリエがわざわざ違う地域のワインをお勧めするのも不自然なものでしょう。

ほとんどすべてのソムリエは考える余地もなくブルゴーニュのワインをお勧めしています。

 

もちろん現地以外でも地域性や伝統を重んじるお店さんやソムリエも多いです。

東京にあってもブルゴーニュの地方料理のレストランであれば、そこのソムリエは当然ブルゴーニュワイン推しになります。

 

クリエイティブなマリアージュ

②のスタイルは、どちらかというとガストロノミックの文化が新しい世界に多く見受けられます。

ワインと料理の質にフォーカスして、伝統とか歴史とは全く別の視点でマリアージュを構築します。

 

たとえば最近は北欧の三ツ星レストランの勢いが話題ですが、それらの国では寒いのでワインは造られません。

だからそもそもワインと料理のマリアージュに歴史や伝統の意識は強くないのです。

北欧の星付きレストランなどの考え方は、伝統的なワイン産地のマリアージュの基本を踏襲したうえで、新しく構築した考え方がおおいです。

 

なお、「ガストロノミック」はフランスやイタリアの星付きレストランでは毎日のように使われる言葉です。

食の文化を一つの芸術レベルまで到達させ、一般的な”食べる目的の食”とは違う次元で理論展開を行う考え方です。

 

伝統VSクリエイティブ?

マリアージュにはこのように伝統的な組み合わせとクリエイティブな組み合わせがありますが、この両者の考え方は折り合いが悪いことも多いです。

 

例えば

①のスタイルが好きな人は②の考え方が好きでないことが多く、

逆に②のスタイルが好きな人は①の考え方が好きでないことが多いです。

 

一般的に、多くのワインファンは①(伝統を重んじるマリアージュ)のことが多いのです

①のマリアージュはすでに体系化をされていますので、基本さえ押さえておけば情報も多いし、正解も探しやすいです。

 

逆に②(クリエイティブなマリアージュ)は難易度が高いことが多いですし、これといった正解はないので探っていくしかありません。

そのためこのスタイルをよしとするワインファンはかなり踏み込んでマリアージュを検討していることが多いです。

 

あなたが②のマリアージュ推しであるとしましょう。

おそらくあなたはワインも料理もかなりの経験があるはずです。

 

そんなあなたにいきなりドンピシャのワインをセレクトするソムリエがいたら、そのソムリエは相当な経験があるか、あるいはよほどあなたとの相性がいいのでしょう。

 

マリアージュの基本

原則は、「重たい」か「軽いか」

ワインのマリアージュは、ソムリエ試験やワインエキスパート試験、ソムリエコンクールでも頻出の問題で、それだけ奥が深いということでしょう。

勉強しようとすれば大変ではありますが、一般の方であれば「重い料理には重いワイン」「軽い料理には軽いワイン」の原則を押さえておけばおおむね対応することができます。

 

 

重い料理とは?

まずは重い料理とは?を検討してみましょう。

重い料理とは、食べ応えがずっしりあって、濃い口当たりや味わいの料理のことです。

 

例えば子羊肉のバーベキューソースを思い浮かべてみてください。

仔羊肉は赤身のお肉で、独特の風味があります。

これを炭火で焼き上げて、濃い目のソースを絡めながらいただくとしましょう。

 

仔羊肉の肉の風味とソースの味わいはを想像してください。決してデリケートなものではないはずです。

むしろ豪快にかぶりつきたい、と考える人も多いはずです。

多くの人は食べ応えがあって「味わいも濃い風味だろう」とイメージしたでしょう。

 

こういう場合には、なんといっても色が濃くて、渋味もしっかりした重めの赤ワインが似合います。

 

 

軽い料理とは?

では軽めの料理であれば、青魚の塩焼きを思い浮かべてください。

またはスパゲッティボンゴレやカルパッチョやフリットの料理などはいかがでしょうか?

 

きっとレモンをしぼって、あっさりと、さっぱりとした味わいを想像したはずです。

ここでは、ぜひ軽めの辛口白ワインを合わせてみてください。

きりっと冷えた辛口の白ワインはレモンの役割もしますので、これだけでお料理が何倍にも美味しく感じるでしょう。

 

では、この時に、重い料理に軽めのワインを合わせてしまうとどうでしょうか?

こうなるとワインが存在感を失ってしまい、けっして「良いマリアージュ」とは言えません。

 

逆にさっぱりした料理を食べているのに重めの赤ワインを飲むのと、料理がワイン存在感に負けてしまいます。

例えばお魚のカルパッチョを食べているときに重い高級赤ワインを合わせたら、カルパッチョは引き立たないし、むしろお魚の生臭さが強調されてしまいます。

 

これがマリアージュの基本の基本です。

 

まずはこの「重い料理には重いワイン」「軽い料理には軽めのワイン」の原則を覚えましょう。

そのうえで、興味のある方は次に進んでください。

 

動物性の脂は渋みでさっぱりさせる

次に、焼肉屋さんでウーロン茶を飲みたくなったときを思い出してみてください。

焼肉屋さんによってはサービスでウーロン茶を出してくれるところもありますよね?

こんなお店であれば「なんて嬉しいサービスなんだ」と思う人も多いはずです。

 

ウーロン茶には渋みの成分であるタンニンが含まれていて、これは赤ワインの渋みと同様の成分です。

そして、タンニンは動物性の脂を洗い流す効果があり、結果として口の中をさっぱりさせてくれるのです。

そのため、例えばフレンチでバターをたっぷり使ったソースや脂分のおおい和牛のステーキなどは、重めの赤ワインが合うということになります。

 

そう考えると・・・

ひょっとしたら、サービスでウーロン茶を出してくれるお店さんは、決してサービス心ではなく、「ウーロン茶で口をさっぱりさせて、お肉をもう一皿注文して」という無言のメッセージなのかもしれないですね。

 

魚介類の磯の香りには、酸味が合う

次に、前述の青魚の塩焼きや、焼き蛤を思い浮かべてください。

磯の香りがふわっと香り、いかにもレモンを絞りたくなる気がしませんか?

 

ここで、レモンを絞る代わりにレモンのような酸味がさっぱりした白ワインを合わせてみてはいかがでしょうか。

例えばロワールのサンセールやミュスカデなど、柑橘系の香りとさっぱりした酸味は磯の香りとよくマッチします。

 

逆に魚介類のお料理は赤ワインの渋みとは合わないことで知られています。

赤ワインの渋味が魚介類の生臭さを引き出してしまい、典型的な「合わないマリアージュ」とされているのです。

 

 

塩味が強い食材は、甘口ワインで

次に、塩味の強いブルーチーズを思い浮かべてみてください。

そのままだとおいしいのですが、やや塩味が強すぎて疲れてしまうかもしれません。

そこでポートワインやソーテルヌなどの甘口ワインと合わせてみてはいかがでしょうか。

 

塩味が強い食材、お料理の場合は、ワインの甘味で塩味を緩和させるのです。

チーズにレーズンの入ったものや、生ハムにメロンを合わせる前菜も、同様の理論です。

 

香りの一致

ここはすこしレベルの高い話かもしれません。最初のうちは飛ばして大丈夫です。

 

味わいの一致とともに、香りの一致もマリアージュでは重要です。

同系統の香りがするワインと料理は良いマリアージュが期待できるのです。

 

この場合の一致は完全なものでなくて問題ありません。

例えばジビエ料理ですと、ジビエ特有の血液の鉄っぽさが際立ちますが、これにはやはり鉄っぽいミネラルの印象の強いポムロールやヴォ―ヌロマネは最高のマリアージュでしょう。

サーモンのマリネにレモンドレッシングを合わせたようなお料理であれば、柑橘類の香りのするシャブリやサンセールもいいですよね。

 

ワインの香りと味わいには、必ず連動性があります。

そのため香りから味わいは連想できますので、これをマリアージュに応用するのです。

 

 

料理とワインの「格」を合わせる?

また、マリアージュの基本に「料理とワインの格を合わせる」があります。

格というとちょっとわかりづらいですね。ここでは単純に料理やワインの値段のことをイメージしてください。

 

ここではわかりやすく高級レストランとご家庭の料理をイメージしましょう。

高級レストランの料理は高いですし、家庭料理にはそこまでお金はかけられないはずですよね。

 

では、一般的な日本の食卓を想像してください。

中には例外もあるかもしれませんが、日本の家庭料理は様々な料理が一度に食卓に並ぶ特徴があります。

また、調味料もソースや醤油、ケチャップなどを各々がつけますよね。

こうなるとワインはあまり高級なものは合いません。むしろ大衆的ながぶがぶ飲めるワインが似合うはずです。

 

 

逆に高級レストランでの食事はどうでしょうか?

きっと家庭料理の安心感よりも、わくわく感や知的好奇心の方が勝っているはずです。

 

高級レストランであればほとんどお料理は一皿ずつで提供されるので、そのお料理に集中できる素地がすでにあるはずです。

こういう時には大衆的なワインではなくて、お料理にふさわしい価格のワインがあう、ということになるのです。

 

もちろん、例えばご家庭でも高級なお肉を買って、高級ワインに合わせるように料理を作れば別です。

この場合は気分を盛り上げて、高級ワインを合わせてみましょう。

 

 

地方料理には、地方のワインを合わせる

特に欧州に関して言えば、もともとその地域に根付いてワインが造られてきた歴史があります。

もちろんその地域独特の郷土料理だってありますよね。これを合わせるのです。

マリアージュの基本中の基本は、やはり地域とワインを合わせる、でしょう。

ワイン生産者はその地域の料理に合わせやすいように意図的にワインの味わいを調整するから、当たり前の結果でしょう。

 

例えば、イタリアのトスカーナ州には名物料理のビステッカ フィオレンティーナというTボーンステーキが有名です。

炭火で焼き上げた牛赤身肉にかぶりつくときに、地方名物の赤ワインがあればいいなあとは思いませんか?

こんな時にはキャンティクラシコや、ブルネッロディモンタルチーノなどのトスカーナ州のワインが最高です。

 

フランスやイタリアは、地方料理が発達していて、それらにはかならずペアとなるワインが生産されているものです。

これらはもちろん味わいとしても合わせやすいのですが、「その地域の食文化を味わう」という意味でも興味深いものです。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?何となくマリアージュの基本が見えてきたのではないでしょうか。

 

ここであげたマリアージュの理論は、基礎的なものです。

高級料理店ではシェフやソムリエはもっと緻密に深くワインと料理のマリアージュを検討しています。

 

本当にいいマリアージュに直面すると、「これこれ!こんな組み合わせを待っていた!」というくらいの感動が味わえます。

ぜひ普段から料理とのマッチングを検討する癖をつけていただき、一段深いワインライフを送ってください。

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