ボルドー、ブルゴーニュのヴィンテージチャート

ヴィンテージチャートは、その年の作柄の良し悪しを点数で評価したものです。

例えば

「ブルゴーニュであれば2005年は天候に恵まれて、点数にすれば20点だけど2004年はそうでもなかったから15点だね」

という具合です

土地の状況が年ごとに代わることはありませんので、変動的な要因は、そのほとんどは天候の状況だということになります。

(これ以外に醸造長が変わった、ワイン造りのスタンスの変更などの人的要因もあります)

 

では、天候とはどのようなものがあるでしょうか?

・気温

・日照量

・湿度

・風

・雨

・雹(ヒョウ)

・霜(しも)

・嵐

等がそのファクターになります。

(ここから、たとえば雨であればブドウの成熟期は一定量が必要でも収穫期にふられると一気にブドウが水分を吸い上げて果粒が破裂するなどのタイムリスクもあります)

それらの条件を総合的に勘案し、煎じ詰めて点数にしたものがヴィンテージチャートといっていいでしょう。

ただし、この点数とはそのジャーナリストや専門家が付けた点数のことなので、必ずしも生産者の思惑と一致しているとは限りません。

たとえばブルゴーニュの生産者は「ワインはテロワールを忠実に反映するものだ」という考えが強く、年がら年中ジャーナリストがいいとするワインを造っているわけではないのです。

例えば天候に恵まれなかった年であれば、誤魔化して力強いワインを造るよりも、線は細くてもエレガントなワインを造ろうとすることもあり、こればかりは個別に検討するしかありません。

 

生産者によってはヴィンテージチャートのことをよく思わない人もいますので念のため検討が必要でしょう。
ワイナリーを訪問して直接生産者と話をする機会があった時に、しつこくヴィンテージチャートの数値を出すのは控えるのが無難かもしれません。

当たり前ですが生産者は自分たちに与えられた環境の中で最良の結果を出すことにのみ神経を集中させています。

ヴィンテージという枠組みの中でワインにどのようにテロワールを表現するのかが重要という見地に立つと、ヴィンテージチャートの良い悪いは必ずしもワインの良い悪いとは一致しないからです。

真面目な生産者であればひ弱なヴィンテージの年に無理やり力強いワインを造ることがいかに自らを欺いているかという思いになるのは当然でしょう。

毎日畑でブドウと向き合っている栽培家であれば、特にその思いは強いかもしれません。

 

ボルドー、ブルゴーニュのヴィンテージチャート

ヴィンテージチャートの功罪

ヴィンテージチャートはワインファンにとってはワインの品質を想像させ、決定づける大きな要因です。

ワインファンによってはヴィンテージチャートが買うか買わないかを決める決定的な要因になることもあるでしょう。つまりわかりやすいのです。

サプライ側からしてもヴィンテージチャートは価格や売りやすさを決定づけるものなのでメリットは大きいと考える人も多くいます。

 

しかし、デメリットももちろんあり、その一番はヴィンテージチャートという言葉で一律に押し込めてしまうことで失われるワインの多様性でしょう。

一年間のヴィンテージチャートといっても気候だけではなくて傾斜やその向きなどの局地的な諸条件もありますし、またブドウ栽培農家の腕も千差万別といえます。

天候は公平ではありません。例えば嵐や雹、霜の害があったとしても、一か所に集中していることはよくあることで、他ではおこらないことも十分にありうるのです。

そのため複雑で一言ではとても言い表せない一年間の日照量、気温、風、降雨量などを要約して点数で表すことを肯定的にとらえない人もいることは押さえておくべきでしょう。

 

良い点数の年の特徴

一般的にヴィンテージチャートの高い点数の年は、天候に恵まれて極端なネガティブ要因はなく、生産者にとってワインが満足のいく造りであることが多いです。

そのため高級ワインはより高値で取引をされ、極端な良い点数の年は通常のヴィンテージよりも1.5倍から2倍以上の値が付けられることもあります。

このような年のワインは一般的に凝縮感があり、メリハリのある味わいに仕上がることが多く、そのため熟成させて飲むタイプのワインになります。

 

凝縮感がある、ということは、水分以外の成分が多いということになりますので、つまりタンニンやアルコールなどの抗酸化物質が多いということですので、それだけ長持ちをするということになります。

(天候に恵まれなかったとしてもシャプタリザシオンやオズモスアンベルスなどで調整することがあります)

ボルドーやブルゴーニュの良いヴィンテージチャートの年のワインは、点数が高ければ高いほど飲み頃は先の年になると考えていいでしょう。

 

逆に、デイリーワインはネゴシアンとの長期契約によってヴィンテージチャートがいいからといって価格にすぐに反映できないことも多く、その意味ではデイリーワインのほうがお得だという考え方もできます。

 

 

良くない点数の年の特徴

逆に点数の低い年のワインは、極端な気象であったり霜や雹などがありブドウが痛めつけられた、という年が多いです。

ただし、トップドメーヌやシャトーになると、あらゆる気象条件を想定してそれに万全の対策をとることも多くあります。

また、常にワインファンからの厳しい目にさらされているため「悪い年だったから品質にもそれが影響した」という言い訳はマーケットに通用しないことを知っています。

そのため逆に選果を厳しくしたり、収穫量を調整するなどをしてワインのハードルを上げてくるのです。

トップドメーヌやシャトーでは、ヴィンテージチャートでは厳しい年だと評価されていても、個別のワインを検討するとそこまで悪いということは少なくなっています。

 

本当に出来が悪い場合はそのワインはリリースしないで格下げしたワインで出荷するか、ネゴシアンに売ってしまうということもあります。

 

ただし、飲み頃については素直にヴィンテージチャートに影響を受けることも多く、点数の低い年のワインは熟成させて楽しむというよりもやや早めに飲んだほうがいいというのが一般論です。

 

デイリーワインにとっての悪いヴィンテージチャートは、まさに醸造家、栽培家の腕の見せ所で、ここにダイナミズムを感じている関係者も少なくありません。

ワインのサプライ側の技術の向上は2000年以降すさまじい勢いで向上していて、悪い年にこそ何とかしておいしいワインにするという技術はある程度確立されています。

そのため、味気ないかもしれませんが、デイリーワインにヴィンテージチャートを採用するのはやや無理があるかもしれません。

 

”当たり年”って?

よく使われる言葉なのであまり言いたくないのですが、当サイトは「当たり年」という言葉には懐疑的なスタンスをとっています。

これは考え方の違いなので仕方がないのですが、生産者は天候に人生が左右されることがあるにもかかわらず、当たった外れたという射幸的な表現が適切だとは感じません。

そもそも当たり年という言葉があいまいだし、何をもって当たり年なのかがはっきりしない中で雰囲気を醸成して売抜いてしまおうという短絡的な姿勢が見え隠れするサイトが多い気がするのです。

ユーザーの情報不足や経験不足を利用して購買意欲を誘うのは短期的な商売としてはありえるのかもしれないかもしれませんが、長期的にはメリットにならないと考えています。

 

 

ヴィンテージチャートの確認の仕方

ヴィンテージチャートは、インターネットで調べれば簡単に見つけることが可能です。

例えば有名なロバートパーカーが創設したワインアドヴォケイトのサイト↑では、だれでも無料で閲覧することが可能です。

また、イギリスの著名ワイン評論サイトのワインスペクテーターのサイトも、だれでも無料で閲覧することが可能です。

ヴィンテージチャートに関しては、人間にとっておいしいワインができる条件かどうかがそのカギです。

人間にとっての良い天候とブドウにとっての良い天候は違います。

また、ブドウ一つとっても生食用とワイン用でも天候に求めるものも違ってきます。

さらに、高級ワインとテーブルワインでも求められる条件は違います。

 

高級ワインは凝縮感が重要になりますので雨量は少ないほうがよしとされますが、テーブルワインは多くの人に届けるためある程度の雨量が必要になります。

ここでご紹介したワインアドヴォケイトのチャートは高級ワインの品評に特化していますので(一部テーブルワインも評価している)、日常お飲みになるワインには参考になりません。

 

 

参考資料

ボルドーとブルゴーニュのヴィンテージチャートをご紹介します。

当サイトはできる限り中立にいようと心掛けていますので、記事本文は気候や栽培状況の解説にとどめています。

とはいえ、それでは参考のしようがない、という方も多いと思いますので、世界的なワイン評価のワインアドヴォケイト(WA)とワインスペクテーター(WS)のポイントを表示しています。

 

ポイントに関しては、例えばボルドーであればメドックもあればソーテルヌもあって、この二つでは天候に関する諸条件は相反することも多いです。
ソーテルヌは湿度がある程度ないと貴腐菌が繁殖しづらく、メドックでは逆にこれが病原菌の繁殖のもととなってしまいます。
そのため、よく検討すると、ソーテルヌが極端にいいとメドックは良くなかったり、あるいはその反対もあり、これがワインの面白さであって、難しさでもあります。

 

 

ヴィンテージチャートは、1990年代以降の急激な栽培・醸造技術の発達で近年はほとんどすべての年が優良な年と呼ばれるようになっています。

実際に2010年以降、特にブルゴーニュでは難しい年もあったのですが、出来上がってみれば平年通り素晴らしいワインが造られていて、これはこれでユーザーには喜ばしいことといえます。

お手元のワインがどのような年だったのか、ご参考ください。

 

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