スクリーミングイーグル(SCREAMING EAGLE 泣き叫ぶ鷲の意味)は、カルト・ワインの最高峰と謳われる赤ワインです。
カルトワインはもともとボルドーで生まれたとされていて、それまでは見向きもされなかったワインが評論家の高得点をきっかけに需給のバランスから価格が跳ね上がった現象をさします。
わかりやすい例がヴァランドローで、ロバートパーカーに高評価を得るまではおそらくほとんどの人は知らなかったはずです。
サンテミリオンの街でワインショップを営み、自分でもやってみようと自宅のガレージで造っていたのです。
ちっぽけなガレージから始めたのでガレージワイン
急にスポットライトを浴びるようになるのでシンデレラワイン
そして摩訶不思議なので”カルトワイン”と呼ばれていて、どれも同じような意味合いで使われます。
その中にあってスクリーミングイーグルはカルトワイン中カルトワインで、流通価格は他を引き離してダントツのトップを走り続けています。
ウエイティング・リスト上の価格は850ドルですが、2次市場に出るとアメリカ国内でも2000~3000ドル。
これが日本に来ると50~60万円もします。いったい何人のひとが中抜きをしているのでしょうか。
スクリーミングイーグルは本拠地を非開示にしていて、驚くことにホームページ表記の住所は郵便局のポストボックスになっているのです。
ウエイティング・リストにさえ、空きがないと言われるスクリーミング・イーグルはワイナリーを訪れることも容易ではありません。
なにしろイギリス、サッカー界の貴公子、デイヴィット・ベッカムでさえ、断られたといいます。
1986年にカリフォルニア州ナパ・ヴァレーのオークヴィルに設立された小さなワイナリーから誕生します。
1992年のファースト・ヴィンテージでいきなり、パーカー・ポイント99点を獲得。品質の高さを見せつけます。
2000年のオークションではマグナム・ボトルに50万ドル(5300万円【当時】)の値がついたほど。
生産量の少なさも手伝って入手困難となっているのです。
2007年ブルゴーニュのドメーヌ ボノーデュマルトレイを傘下に収めています。
スクリ―ミングイーグルは年による差が少ないとされていますが、特に素晴らしい年は以下のとおりとされています。
2007, 2005, 2002, 2001, 1999, 1997, 1996, 1995, 1993, 1992
スクリーミングイーグル
カルトワインの代名詞
カルベネ・ソーヴィニヨン主体にメルロ、カルベネ・フランをブレンドしています。
初期のころよりカルベネソーヴィニヨンの割合が減り年々、メルロが増えています。
新樽率は65パーセント。フレンチ・オークの樽で20か月ほど熟成させています。
600~800ケースほどしか生産されず、リリースされるのは6000本ほどです。
この6000本というのはロマネコンティとほぼ同じ本数で、おそらくワイナリーの戦略として意識している数字でしょう。
スクリーミングイーグルの味わいは、一言で言えば凝縮感でしょう。
ボルドーの一級シャトーのワインを倍の濃さにしたような濃密な香りと味わいですが、渋みが滑らかなので重たさはそこまで感じません。
しかし口に含むといつまでも残る風味の深さと余韻は唯一無二で、世界中のプレミアムワインの中でも特異な存在に感じたことを覚えています。
おそらくスクリーミングイーグルを飲んだ後にフルボディのワインをいただいても随分と軽いワインだと感じるでしょう。
そのくらいの凝縮感を自然に感じさせてくれるワインなのです。
カルトワインへの批判と再反論
ところで、カルトワインの存在にはマーケットへの影響力からか、批判も多くあって、特に一部の生産者では毛嫌いする人も少なくありません。
ここで双方のスタンスを検討してみましょう。
①カルトワインは一部の評論家(exロバートパーカ-)によって生まれることが多く、そのためロバートパーカー好みのワインを意図的に造り、値段を吊り上げているのではないかという疑問が発端となります。
最近はマシになりましたが以前のカルトワインはどれも色が濃く、味わいも濃厚でリッチ、アルコールのボディがあって樽香の強いいかにもアメリカ人好みというイメージのワインが選ばれていました。
②これらのワインは確かに話題に上りやすいし、記事にしやすいのでジャーナリズム向けというのはその通りでしょう(ラフィットの良さをいまさらくどくど書いても記事にならない)。
実際にマーケットには受け入れられて、ユーザーから見てもわかりやすく、ワインファンのすそ野を確実にふやします。
①しかし一方でワインの傾向が一様のパターンになりがちで、こうなるとワインの一番の魅力である多様性が失われてしまうという批判が根強いのです(評論家への批判)。
②そして、批判される評論家側はこれに再反論をしていて、まずは閉塞的なワイン業界に風穴を開け、新風を起こしたという実績がその源泉となります。
後ろ盾はなくてもいいワインを造ろうとする生産者保護の見地からすればその功績は重大でしょう。
零細で非力な生産者を元気づけ、新しいワイン造りに立ち向かうきっかけを確実に与えているのです。
これらの反する①と②の理屈はどちらも正論ですし、双方の意見とも「いわれればその通りだなあ」と思うかもしれません。
ただし、カルトワインは一様にどれも生産量が少なく、そのためマーケットが過剰に反応し、品質に見合わない価格のものも多いのは事実かもしれません。要するに割高なのです。
そのため品質と価格で選ぶのであればカルトワインは避けるべきですし、飲むときは有名税を丸呑みする覚悟ができたか、あるいはそれでもいいと思えるようになったら飲むのが賢い付き合い方でしょう。
カルトワインのカルト
生産量が圧倒的に少ないので、否が応でも価格は跳ねあがります。
スクリーミング・イーグルがいかにしてカルト・ワインの頂点に立ったかというストーリーは有名ですが、醸造方法なども含めてワイナリーの詳細はあまり語られることがありません。
その神秘性が高値を誘発しているに違いないと見る向きもあります。
現在の総支配人、アルマン・ド・メグレも醸造家、ニック・ギラソンも職人気質で、みようによってはミステリアス。
普通は酒造りの親爺は聞かれるまでは寡黙でも聞かれれば堰を切ったようにしゃべりだすのに、彼らは聞いても寡黙を貫くのです。
唯一出回っている彼らの言葉としては、「スクリーミング・イーグルをカルト・ワインと呼んでほしくない」だけとか。
つまりほかのカルトワインと同じに扱われるのは不本意だと、それくらいの気持ちだということでしょう。
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