オーパスワン(OPUS ONE)は、カリフォルニアはもちろんアメリカを代表するボルドータイプの赤ワインです。
サンフランシスコ・ベイエリアの北部、ナパ郡にあるオーパスワン・ワイナリーで造られています。
シンプルでモダンな建物からは州道29号線を挟んでロバートモンダヴィ・ワイナリーを臨みます。
このワイナリ-のオーナーこそオーパスワン・ワイナリーを創設したロバートモンダヴィです。
ニューワールドと伝統の融合によるいいとこどりの唯一無二のワインを目指し、フィリップ・ド・ロッチルト(ムートンロートシルト)と共に立ち上げたのです。
1980年にベンチャー立ち上げが発表されるとワイン界では大きなニュースとなり、1984年にファーストリリースの1979年と1980年が発売されます。
1993年からセカンドワインのオーバーチュアをリリースしています。
オーパスワンはインテリ社長が夜な夜な飲むような、よく言えばスマートなワインというイメージをお持ちの方は多いかもしれません。
しかし、ワインの成り立ちを検討すると、決してスマートな生い立ちではないことがわかります。
アメリカのワイン界を現在の位置におし上げた功労者というか、それまでの常識を塗り替えたワインなのです。
本家のムートンロートシルトは1973年にそれまで2級にされていた格付けを唯一覆したシャトーですので、その意味ではオーパスワンこそまさに
「這い上がってきたワイン(2019年正月にYOSHIKIさんがそう表現した)」
でしょう。
普通の感覚であれば、オーパスワンを「聞いたことのある高級ワイン」ということでも全く問題ありません。
そのうえで、ここはぜひアメリカワインが本音ではエリート層から小ばかにされていた時にムートンとタッグを組み、世に送り出す緊張感をご想像しながらお読みいただくことをお勧めします。
運よくオーパスワンをお飲みの際に、また格別の味わいになることをお約束します。
オーパスワンは、メドックの上物のシャトーのように威風堂々としていて濃厚で奥深くパワフルですが、頑強さやとっつきにくさはなく、むしろ親しみやすささえ感じるのです。
日本のワインショップでも見かけることの多いワインで、人生の節目のここぞというときにこそ味わい深いワインとして、強くお勧めします。
後述しますがオーパスワンの成功は単なるいちワイナリーの成功にとどまらず、アメリカワインのユーザーに大きな衝撃を与えます。
それまで理性ではアメリカ産ワインを擁護していたワインファンも、本音ではどこか懐疑的で、大事な場面ではフランスワインを飲んでいたのですが、これが根底から覆るのです。
そしてこれは日本のワインが世界に打って出るためのロールモデルとしても興味深く、「同じことが日本のワインに起こったら」とイメージしてみるとワクワクします。
「〇〇県の〇〇というワイナリーは、ボルドーの1級シャトーとジョイントベンチャーを作ったよな。それがなんと国際品評会で1級シャトーを押さえて一位になったんだ。審査員の驚きっぷりは、見ていて気持ちいいくらいだったよ」
もちろんこれはジョイントベンチャーであってもなくてもかまいません。
こんなニュースが語られるようになれば、ユーザー心理は一気に日本国産ワインにも目を向けだすでしょう。
オーパスワン ワイン
ワインの特徴とブドウ品種
カリフォルニアは地中海性気候。夏の強い日差しで乾燥しているのでブドウ栽培に適しています。
特にオーパスワンのあるオークヴィルは日照時間も長く、山地に囲まれたナパ郡は海風で冷やされることもないので理想的と言えるでしょう。
68ヘクタールの畑は4か所に分かれています。
カルベネソーヴィニヨンが80パーセント
カルベネフラン、メルロー、プティヴェルドはそれぞれ6パーセント程度、マルベックを数パーセント栽培しています(収穫年によって変動します)。
手摘みで収穫され、フレンチ・オークの新樽で18か月間熟成されます。
オーパスワンの価格
価格帯は5~6万円ほどですが、ヴィンテージによっては7~8万円近くすることもあります。
2015年が最高の当たり年と言われていますが、2013年も出来がよく、その割には廉価です。
2000年以降、メドックの1級ワインは高騰し続け、現在では5万円台で買えることはほぼありません。
ムートンロートシルトが10万円程度で流通していることを考えると、非常にお値ごろのワインであるといえます。
また、オーパスワンはカベルネソーヴィニヨンの比率が8割とやや少なめなので、熟成させても若くても楽しめる銘柄なので狙い目と言えるでしょう。
もっとも、「じゃあ5万円はリーズナブルなのか」という疑問を思うユーザー様がいても当たり前でしょう。
当たり前ですが一般の金銭感覚では5万円は大金です。
そのため楽しむ際はしっかりと事前知識を得ていただきたいワインですね。
ビジネスエリート好みのワイン?
オーパスワンといえば、六本木のワインバーで成功した若手社長が飲んでいるイメージを持つ人は多いかもしれません。
実際に私もレストランを経営していた時に、同じような場面を何度か見ることがありましたので、外れてはいないでしょう。
この「オーパスワン=ビジネスエリート」のイメージについては様々な評論家が具体的に理論展開しています。
私が一番納得した理論は、アメリカのワインの歴史に垣間見ることができました。
アメリカは1920年に禁酒法の施行とともに撤廃までの13年間、ワイン業界は衰退の一途をたどることになります。
(ただし禁酒法はいわゆるザル法で、抜け道は探そうと思えば探せたし、中には目ざとく高品質ワインを造り続けたワイナリーもありました)
そして1933年に解禁されると堰を切ったように小規模ブティックワイナリーができ始めますが、13年間の間に決定的なマーケットの欠落が生じていたのです。
それは「ワインを楽しむ」という消費者の感覚が完全に失われたこと。つまりいいワインを造っても売れないのです。
そしてそれが回復するのは第二次大戦以降だったのです(事実アメリカでワインの消費量が蒸留酒を上回ったのは1980年でした)。
消費者側にワインを楽しむ素地や知的欲求にこたえる情報がないと偏見と根拠のないこだわりが生まれます。
そのため1980年代まではアメリカ産ワインは本音では小ばかにされていたのです。
そしてその大衆心理にインテリ層、エリート層が自律反発する形でワインの品質そのものに目を向けはじめます。
その流れから、フランスの名門が造るアメリカのワイン、オーパスワンはマーケットに望まれる形で一気に一流ワインの仲間入りをすのです。
この分析は、アメリカのワイン界が1980年代までマーケット的に成熟できていなかったことを指摘していますが、これは当たっていると私は考えています。
アメリカのスーパーには低品質で廉価なワインが並び、辛口白ワインをシャブリ、甘口ワインをソターン(ソーテルヌの英語読み)と名乗っていたのです。
まがい物・偽呼称のワインの横行がひどく、禁酒法撤廃の翌年1933年に品質最低基準を定める法律が制定されましたが、「ワインでないものをワインとして売ってはいけない」というレベルのものだったのです。
「なんて幼稚な法律を制定したんだ」と思うかもしれませんが、これはそれだけ業界がずさんな状況であったことを示す根拠でもあるのです。
これになげくワインファンが、アメリカ産の高品質ワインの登場を渇望する姿は容易に想像できるでしょう。
エチケットの意味は?
エチケットは白地に、人物の横顔のシルエットが青で描かれたクールな印象ですが、これはワイナリーの創設者2人の巨匠。
“カリフォルニア・ワインの父”と呼ばれたロバート・モンダヴィとシャトー・ムートンロートシルトのオーナー、フィリップ・ド・ロッチルトです。
(実際に造ったのはロバートの息子、ティモシーとムートン・ロートシルトの醸造担当ルシアン・シオノーですが。)
初ヴィンテージは1979年。合弁事業の正式な立ち上げは翌年です。
名称は英語圏でもフランス語圏でも違和感がないようにラテン語を使用しました。
オーパスワンは音楽用語。
”作品番号1番”という意味です。
オーパスワンの成功は、「アメリカでも世界に渡り合えるワインが造れる」という事実を生みます。
これがその後のブティックワイナリーの経営者にとってどれほどの励みになったかははかり知れません。
なぜこれだけの短期間で成功を収めたのかといえば、もちろん気候や土壌の先天的な条件もありますが、ヨーロッパ諸国のような伝統の重みがない分、ユーザー嗜好を貫けたということでしょう。
ワインづくりの精緻さに加えて、マーケット戦略やリリースのタイミングなど、ビジネスマンとしては学ぶところの多いワインなのかもしれません。
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