クレレットドディーとは?特徴とブドウ品種、合わせる料理

クレレットドディー(CLAIRETTE DE DIE)は、フランス最古の自然派スパークリングと呼ばれるワインで、個性的なアロマが豊かな発泡ワインになります。

ディーの村を中心に31のコミューンで構成されていますが、おおよそローヌ川の支流のドローム川流域で造られているといっていいでしょう。

 

ローヌ川の流域のなかでもドローム川と分岐するルプーザンのあたりはなぜかブドウ栽培がおこなわれていません。

ぶどうが栽培できそうものならどこでも植えてやるという気質のフランス人がこれをやらないのが不思議なくらいで、その先にポツンとあるのがこの栽培エリアなのです。

(若干量は栽培されていますが話題にならないレベルで、ほとんどコートデュローヌAOCとして販売されます)

ディの村はローヌ川の東側、スキーで有名なグルノーブルとローヌ川のちょうど中間地点で、地図を見てお分かりのとおり山あいにあって標高は700メートルと高地です。

↑はディの駅なのですが、いい感じになにもありません。

「こりゃ歩いてもなにもないだろ」

という無言の圧力を感じます。

実際に見渡してみても売店一つありません(繁華街は駅から少し離れたところにあります)。

 

どうしてこんな辺鄙な場所でブドウを栽培しようとしたのか興味がわきますが、こういうところのワインこそが変わっていて味わい深いのだからワインも面白いものでしょう。

 

このワインは、おそらく多くの方が誤解をされているワインかもしれません。

クレレットドディというと、「ディで造られたクレレット種のワインでしょ」と考えるのが普通でしょう。

もちろんAOCクレレットドディはあって、クレレット種100%の瓶内二次発酵のワインです。

ところがこのワインは生産量が少なく111ヘクタールしかありません。

 

悩ましいことに同じAOCに内包する形でミュスカ種主体のクレレットドディメトードアンセストラルという別の呼称があって、これをほとんどの人はクレレットドディと呼んでいるのです。
ただしこれは無理もなく、クレレットドディメトードアンセストラル(CLAIRETTE DE DIE METHODE ANCESTRAL)のほうは栽培面積は1381ヘクタールと10倍の開きがあるのです。

そのため日本に入るほとんどのクレレットドディはこちら側で、クレレット種100%のワインはほとんど見かけません。

 

同じAOCで製法もブドウ品種も違うのであれば、別の名称にしたほうが消費者にとってはわかりやすいのですが、いまのところ改称の気風はありません。

どうしてこんな山奥でワインを造ろうとしたのかは興味深いのですが、歴史は相当古く、古代ローマ時代には上質なワイン産地で知られていたという記録が残っています。

当時の歴史家、プリニウス(大)は当時ヴォコンスと呼ばれていたディのワインを、ローマ帝国最上のワインとして称賛しているのです。

ヨーロッパは水質が悪く、もともと水とワインを割って飲んでいたのですが、ヴォコンスのワインはさっぱりしていて水と割らないでも飲めるワインとして重宝していた、というのです。

 

実際に現在のクレレットドディ―も、アルコール度数が少なめのうす甘口のワインが主体で、飲みやすく、さっぱりしていてウキウキするような味わいです。

大人数が集まるパーティーの乾杯やウェルカムドリンクにぴったりで、ワインファンならずとも一度は試してみたいワインとして強くお勧めします。

 

クレレットドディー

わかりづらい全体像

このAOCはわかりづらい構造になっていて、おそらくソムリエ試験を受けようという人でもなかなかすべてを理解している人は少ないかもしれません。

勘違いされていることが多いのですが、クレレットドディーは瓶内二次発酵(シャンパン方式)のスパークリングワインで、クレレット種が100%、最低瓶内熟成期間は9か月、残糖15グラムです。

こちらは現代的な仕上がりですが、個性に乏しくニュートラルな味わいです。

 

ところが同じAOCにクレレットドディーメトードアンセストラルというワインがあります↑。

トラディションとか近隣の地区の名前からディオワーズとも表記をします。

こちらははメトードリューラルといってタンクで途中まで発酵させ、その後に瓶に移し替えるという製法なのです(トランスファーメソッドとも言います)。

ブドウ果汁を非常に低温で発酵させ、こうすることで酵母の活動は抑制され発酵期間が長くなります。

発酵が完全に終わる前に瓶詰めして仕上げるので、シャンパン方式と違って糖分添加をしないで仕上げることになります。

これが「自然派スパークリング」と呼ばれる所以です。

残糖は35グラム以下となっていますが、多くはほのかに、ですがはっきりとした甘みを感じる程度の味わいです。

また、ブドウ品種もクレレットは補助品種でミュスカ種が主体(75%以上)なので、混同されないようにしてください。

日本に入るクレレットドディのほとんどはこちらで、マスカットの風味が心地よく、一種のクセを感じるかもしれませんが、これがこのワインの魅力なのです。

 

さらに、クレレット種を55%以上使った瓶内二次発酵のワインにクレマンドディというワインがあります。

残糖は15グラム以下で瓶内二次発酵の製法で仕上げられますが、栽培面積が41ヘクタールしかないので私も見かけたことがありません。
また、スティルワインはコトードディー(COTEAUX DE DIE)というAOC名で、こちらはクレレット種100%から造られます。

こちらはなんと栽培面積は3ヘクタールで地元消費。そりゃ見かけないわけです。

 

なお、構成するコミューンは以下のとおりで、これは共通しています。

Aix-en-Diois, Aouste-sur-Sye, Aubenasson, Aurel, Barsac, Barnave, Beaufort-sur-Gervanne, Châtillon-en-Diois, Die, Espenel, Laval-d’Aix, Luc-en-Diois, Menglon, Mirabel-et-Blacons, Molières-Glandaz, Montclar-sur-Gervanne, Montlaur-en-Diois, Montmaur-en-Diois, Piégros-la-Clastre, Ponet-et-Saint-Auban, Pontaix, Poyols, Recoubeau-Jansac, Saillans, Saint-Benoit-en-Diois, Saint-Roman, Saint-Sauveur-en-Diois, Sainte-Croix, Suze-sur-Crest, Vercheny , Véronne.

 

楽しみ方のコツ

ほんのりとした甘口発泡なので、しっかりと冷やしてウェルカムドリンクなど食前酒として楽しむのに最適です。

8度くらいに冷やし気味にして、できればシャンパーニュ同様、フルートグラスでいただきたいワインですね。

食前に飲まれることが多いですが、料理と合わせることで個性を引き立てることができます。

そのため、白身魚のフライやバターソース料理、魚介のソテー、フルーツサラダとのマリアージュも最高です。

食後に楽しむのであれば、フルーツのタルトやバターケーキと相性が良いでしょう。

美味しく、かつ価格も手ごろなのでパーティー向けにもよく用いられます。

そのためカナッペやハム類などの前菜類と一緒に飲むと、ワインの泡が食欲を増進してくれます。

楽しいパーティーがより一層楽しく感じることでしょう。

 

程よい甘さで9%程の低アルコールなので、お酒につよくない女性でも飲みやすいスパークリングワインです。

ワインショップでも2000円程度で購入することができるので、運よく見かけたら試してみてはいかがでしょうか。




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