シャトー ル パンは、ボルドーのポムロール地区を代表するシャトーです。
所有している畑は1.9haと小さく、年間平均生産本数は約7000本と少量生産です。
ここはヴューシャトーセルタンの経営者が現代的スタイルのボルドーワイン造りを標榜して造ったワインで、伝統的なヴューシャトーセルタンの造り方とは対照的です。
元々畑に施肥を拒否していたところから譲り受けたため、畑は痩せていましたが、これが逆に高級ワイン造りには最適だったのです。
数年のうちにあっという間に価格が上がってしまい、いわゆるシンデレラワインの代名詞のようなシャトーです。
生産量がすくなく、見かけてもとんでもない価格なので(おおよそ30万円)、有名税をそのまま飲み込むような気持で味わうか、あるいはそれでもいいと思えるようになったら飲むワインでしょう。
痩せているということは、土壌に大した栄養分はなく、生食用のブドウのようにそのまま味わう果物の栽培には向きません。
しかし逆にワイン用の土壌になると痩せた土壌は高級ワインの絶好の栽培環境になるのです。
土壌が肥えていると果肉に栄養分を送り込んでしまい果実は肥大し、相対的に果皮とのバランスが悪くなってしまい、凝縮感に欠けるワインとなります。
高級ワイン用のブドウにとって重要なことは凝縮感なので、簡単にみずみずしく肥えさせてはならないのです。
おいそれと甘やかしてはなりません。高級ワインのためにはさらに追い打ちをかけます。
やせた土地を選んだうえで、高い密植度合いで植えることでブドウ樹同士で競争をさせ、そうすることで根を深くおろして深層部の諸要素を吸い上げさせるのです。
ブドウ栽培に諸説はありますが、煎じ詰めれば高級ワイン造りにはある程度のスパルタは必要だということでしょう。
ワイン用のブドウ産地を訪れたときに思い出してみてください。
きれいに並んだブドウ木を眺めて「なんてきれいに並んでいるんだ」と思うか、「なんて過酷な競争をさせられているんだ」と思うかは人それぞれでしょう。
シャトールパン
”松”のシャトー
栽培面積はメルロ100%です。カベルネ フランも栽培していますが、ル パンにはブレンドしていません。
土壌は鉄分豊富な砂利質です。畑はすべてポムロール台地の一番高いところにあります。
収穫はすべて手摘みで行い、選果は畑で行います。1haあたり34hlと、厳しく収量制限をしています。
醸造は天然酵母を使用し、ステンレスタンクで行います。
1981年からマロラクティック発酵と、熟成に100%新樽を使用しています。
熟成は15~18カ月行われ、無濾過で瓶詰めします。
ちなみにパン(PIN)というのは松の意味で、畑を買い取った時に松の木がぽつんと立っていたところに由来します。
ルパンという名前の響きは、最初からカルトワインになることを狙ったネーミングにしてはやや貧相で、名前の由来も壮大なイメージとは違い、あまりにも日常的でしょう。
おそらく最初のころはここまでの評価のワインになることは考えていなくて、「あそこの松の畑」程度の気持ちで名付けたのかもしれません。
ワイナリーの歴史
1924年からマダム ロービーが所有していましたが、収穫したブドウをネゴシアンに販売していました。
1970年代にその1ha程の畑が売りに出されていた時に、ジャック ティエンポン氏の叔父のレオン ティエンポン氏が興味を示します。
レオン ティエンポン氏はヴューシャトーセルタンの支配人をしていた人物で、その畑の潜在的な質の高さを見抜いていました。
そのレオン氏がジャック氏を説得し、1979年にジャック ティエンポン氏が購入しました。
ジャック氏は畑の40%を植え替え、ミッシェル ロラン氏を一部コンサルタントに迎えました。
初歩的な設備からワイン造りを始めました。
1982年のル パンがパーカーポイント100点を獲得し、一躍スターシャトーの仲間入りを果たしました。
1984年と1986年に畑を買い足し、今の面積になりました。
現在はジャック ティエンポン氏と、マスター オブ ワインである妻のフィオナ女史達とワイン造りを行っています。
評論家やワイン愛好家から高い評価を得ていて、「ポムロールのロマネコンティ」と評されています。
1979年がファースト ヴィンテージで、1982年にパーカーポイント100点を獲ってから価格が高騰しています。
平均生産本数が7000本と大変貴重であり、オークションでも大変な高値がついています。
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