サンテミリオン(ST-EMILION)は、フランス南西部にあたるリブルネ地域の中心部にある地区です。
ボルドー地方の中でも高級赤ワインの産地として知られており、格式の高いワインが造られています。
後述しますが同じボルドーでもメドックとは明らかに違う特徴を持っていて、「メドックは嫌いでもサンテミリオンは好き」というワインファンも多くいます。
わかりづらいのですが、同じ地区でAOCが二つあって、
SAINT-EMILION(AOCサンテミリオン)
SAINT-EMILION GRAND CRU(AOCサンテミリオン グランクリュ)
の二つがあり、お察しのとおりグランクリュのほうに上質なワインが集まっています。
世界的に高級ワインとして知られるシャトーオーゾンヌやシュヴァルブラン、カルトワインのヴァランドローの生産地でもあります。
【動画でも解説しています】
メドックやグラーヴは平たんなブドウ畑なのですが、サンテミリオンはドルドーニュ河右岸に続く小高い丘があり、起伏のある丘陵地帯です。
主要品種がメルローであることもメドック、グラーヴとの決定的な違いをもたらします。
また、サンテミリオンには衛生地区(サテライト)があり、ハイフンで区切って地区を表示します。
これらを足すとサンテミリオンそのものと同じ程度の面積になります。
リューサック-サンテミリオン(LUSSAC ST-ÉMILION)
モンターニュ-サンテミリオン(MONTAGNE ST-ÉMILION)
サンジョルジュ-サンテミリオン(SAINT GEORGES ST-ÉMILION)
ピュイスガン-サンテミリオン(PUISSEGUIN ST-ÉMILION)
ただしこれらの衛生地区も同じようにサンテミリオンの表記があり、これがユーザーにワインをわかりづらくさせています。
また、品質は本家サンテミリオンと同様の品質のワインを探すとなると一苦労で、飲むときは「こういうワインもあるんだ」というくらいの気持ちで楽しむほうが無難かもしれません。
サンテミリオン
広大なブドウ畑
サンテミリオンはボルドーを代表する赤ワイン産地で、ドルドーニュ川の右岸にブドウ畑が広がっています。
ブドウ畑は5500haほどありとても広大です、そのため人口が少ない地域ながらも非常に多くの生産者が存在します。
穏やかな海洋性気候と大陸性気候を合わせ持ち、水も豊かなのでブドウ栽培に適しています。
土壌は
①コート(COTES)と呼ばれる丘状の石灰岩の地域と、
②グラーヴ(GRAVES)と呼ばれる低地の石灰質と砂や粘土が混ざる地域
があり、この2つの地域で良質なブドウが育てられています。
コートのほうは少し土壌を掘ると基層が堅い石灰岩の岩盤になっていて、斜面をだんだん状に削ってその上に土を盛った様なところに栽培されているところもあります。
そのためコート地区はシャトーオーゾンヌのように岩をえぐって貯蔵庫を造るところも少なくありません。
(これがメドックだと水位が高いので地上の醸造所兼貯蔵庫になります)
一方グラーヴのほうは平たんで一目するとこれでは水はけが悪くていいワインができないんじゃないかと思うかもしれません。
ただし、その代わりといっては何ですが土壌は砂利質とワイン造りには恵まれていて、粘土も鉄分も十分に含んでいます。
もっとも、相対的に低地なので晩霜に襲われやすく、実際に1956年に晩霜によって壊滅状態に追いやられました。
ブドウ品種とワイン
ブドウ品種はメルロー(60%)を主体とし、カベルネソーヴィニヨン(10%)やカベルネフラン(30%)、マルベックなども栽培されています。
土壌がグラーヴの地域ではカベルネフランが中心となっており、ボルドーの高級ワインの中でもカベルネフランの比率が高いワインは珍しいです。
サンテミリオンで造られるワインは、ボルドーワインながらもブルゴーニュに似ていると言われています。
これはメルローの特徴がカベルネソーヴィニヨンに比べて渋味や酸味が少なく、そのため熟成が進みやすいからです。
サンテミリオンのワインは熟成が進むと明るいガーネットの色調になり、これがピノノワールと似ているのです。
メドックなどのボルドー左岸とは違った魅力のあるワインとなり、穏やかなタンニンとまろやかな味わいのワインです。
大きすぎるが故の生産事情
サンテミリオンはとにかく広大な面積があり、それこそ無数のシャトーが存在します。
また、格付けもメドックとは違い優秀なワインを選んでAとBに分けて紹介するだけなので、それ以外のワインがまさに玉石混在になっているのです。
これは説明をしっかりするところなのですが、ほとんどのシャトーはシャトー元詰めで品質の管理もできていますが、なにせシャトーの数が多すぎてすべてを把握することは難しいのです。
おおざっぱに言えば、ほんの一部の特級ワインがあって、そのイメージがサンテミリオンには強いのですが、実際には大部分は気軽に飲めるワインだといえます。
うやうやしく飲む必要はないし、かといって品質は一定以上はありますので裏切られることも少ないでしょう。
なかにはシャトーと自称していても、おんぼろな屋敷の横庭で栽培しているところも少なからずあります。
三ちゃん農業で年に10樽そこそこしか出さないところもあって、そういうワインこそ楽しめれば本物でしょう(筆者はそういうワインこそダイナミズムだと思っている)。
高級住宅街ではなく、下町を散歩してみる気持ちでサンテミリオンのワインを飲んでみてはいかがでしょうか。
サンテミリオンという名前の響きはすでにワインファンの中で浸透していて、そのため「サンテミリオンのワインであれば売れる」という意識が一部の生産者側にあるのはその通りかもしれません。
(これはどこの地区でもあり得ることで、名前が売れてくるとそれにつられしまう消費者心理の弱みを逆手にとる人はどこにでもいます。)
そのため後述する格付けシャトー以外はソムリエやワインに詳しい人の意見を参考にしつつ検討するか、あるいは細かいことは気にしないでおおらかな気持ちで飲むことをお勧めします。
サンテミリオンAOC
1999年に世界で初めてワインの産地として世界遺産に登録されたことでも知られている地区です。
AOC認定を得たのは1936年になります。
1955年以降、独自の格付けが行われており(公式発表は1958年)、AOCサンテミリオン・グランクリュの中からプルミエ・グランクリュ・クラッセと、グランクリュ・クラッセの2つに分類されます。
さらにプルミエ・グランクリュ・クラッセはクラスAとクラスBにランクが分けられます。
この格付けは10年毎に見直されます。
メドックの格付けは1855年以降ほとんど行われていないことを考えると、サンテミリオンのほうが柔軟な姿勢といえます。
現在は2012年に見直された格付けが適応されており、Aクラスが4シャトー、Bクラスが14シャトー、グランクリュ・クラッセが64シャトーになります。
それぞれのクラスのシャトーは以下のとおりです。
クラスA
Château Angélus – 2012~
Château Ausone
Château Cheval Blanc
Château Pavie – 2012~
クラスB
Château Beau-Séjour Bécot
Château Beauséjour (Duffau-Lagarrosse)
Château Bélair-Monange
Château Canon
Château Canon-La-Gaffelière – 2012~
Château-Figeac
Château La Gaffelière
Château La Mondotte – 2012~
Château Larcis-Ducasse – 2012~
Château Pavie-Macquin
Château Troplong-Mondot
Château Trottevieille
Château Valandraud – 2012~
Clos Fourtet
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