シャトーディケムとは?その特徴と歴史

シャトー ディケム(CHATEAU D’YQUEM イケムと呼ぶ人もいます)は、1855年のソーテルヌの格付けで、唯一プルミエ クリュ シュペリュールに格付けされたシャトーです。

プルミエクリュシュぺリュール(PREMIER CRU SUPERIEUR)は、「特別1級」や「超1級」の意味で、1級のほかのシャトーを引き離した存在ですが、同じ扱いのほかの特別1級とはわけが違います。

至高を目指した究極のワインと言っても過言ではなく、「そりゃ言いすぎでしょ」と思う人も一口飲めば納得するだけの品質でしょう。

 

セカンド ワインはなく、品質があまり良くないものは樽売りしています。

さらに品質基準が厳格であるため、ディケムとして生産されない年もあります。

 

所有している畑は115haと広大で、そのほとんどで栽培され、栽培ぶどうはセミヨン80%、ソーヴィニヨン ブラン20%です。

これだけの広い畑で栽培していながら年間生産量は7000ケース程度と極端に収量を減らしているのです。

 

イケムのすばらしさはすでに世界中で認められていますが、甘口ワインということでなかなか口にする機会がないためか、あまり日本では紹介されていません。

1855年の格付けの際も、唯一の特別一級という地位を得ましたが、おそらくワイン通であれば「特別であっても仕方がない」と納得するでしょう。

ちなみに貴腐ワインの中ではディケムやソーテルヌは認知度が高く、そのためここが貴腐ワイン発祥の地なんだと思っている人は案外多いかもしれません。

しかし、世界的にはドイツのシュロスヨハニスベルグが発祥と言われていて、それが混同して日本に伝わったのでしょう。

実際にソーテルヌで貴腐ワインを最初に造ったのはトゥールブランシュで、当時の所有者はフォックスというドイツ人だったのです。

 

 

シャトーディケム

唯一無二のワイン


栽培過程では、厳しい収量制限が特徴的で、徐葉とグリーンハーヴェスト(適切にまびいてぶどう果をしぼる)を計画的に行います。

収穫はすべて手摘みで行いますが、貴腐化の進み具合がブドウの粒により異なるので、5~6回に分けて慎重に収穫されます。

貴腐菌が程よくつき、水分が蒸発したものは熟練の摘み手がいないとできませんが、摘み手は収穫期はどこも欲しがるので手が回りません。

にもかかわらずディケムは40人を超える優秀な摘み手を抱えているのです(常用雇用者のみで40名。総勢130名)。

 

発酵は100%新樽を使用して行いますが、熟成用の樽は、新樽率30%で行います。最低3年の熟成を経て瓶詰めされます。

もっとも、熟成期間には3か月に一度の澱引きと週に二回の目減りの補填があり、この段階で20%が目減りします。

さらに瓶詰め前には厳格な品質テストがあって、これにパスしないとイケムとして出荷されないのです。

ここで、簡単な比較をしてみますが、通常は一本のブドウの樹から造られるワインは、例えば南仏のワインであれば3~5本を造ります。

ボルドーの有名シャトーですと、厳しい選別や収量を減らしてブドウの果実にエッセンスを集中するため一本のブドウ樹から半分のボトルほどしか造りません。

それをイケムは一本のブドウからグラス半分以下しか造らないのです。

 

文字にすれば簡単かもしれませんが、これを実際のシャトー経営でやろうとすると、とてもできないというのが普通の経営者でしょう。

よほどの資力がないと続けられないし、資力があったとしても少しは手を抜いてもいいだろうという気にもなるかもしれません。

それもそのはず、ここまでは他の1級シャトーでもやらないし、半分変わり者あつかいされているきらいもあるのです。

 

お客様が持ち込んだディケム


私がまだソムリエの資格を取って間もないころ、当時勤めていたレストランでよく高級ワインを持ち込むお客様がいました。

時にはクリュグ、時にはラフィットロートシルトと、そのたびに「飲んでみなよ」と一口飲ませていただいていたのです。

しかし、ディケムの古いヴィンテージを持ち込んだときは運が悪く、私の担当のテーブルではありませんでした。

私の担当ではないということを知った瞬間からその日はずっとグレースケールの中で働いているようでした。

お客様が来店し、食事が進むとディケムを取り出します。もちろん抜栓は私ではありません。

人生のすべてが灰色の中、遠くに見えるディケムのボトルとそのグラスだけが色彩を放っていました。

遠くからディケムの美しいグラスを眺めていると、そのお客様は化粧室に行くふりをして私の近くにより、耳元で一言ささやくのです。

「飲みたいでしょう。顔に書いてあります。一杯分残して帰りますから、うまく飲んでください。」と。

 

こうなると仕事どころではありません。

そのお客様の帰った直後を狙ってテーブルを片付けるふりをしてディケムのボトルをかっさらいます。

そしてグラスに注ぎ、香りをかぐと、身体が震えたのです。

これまでに感じたことのない衝撃、体中の毛が逆立つような感覚でした。

 

香りは優雅の極みでアプリコットや黄桃のコンフィチュールのような香りに、焼きたてのク ロワッサンやヘーゼルナッツのような香りが合わさります。

甘味も酸味も強く感じますが不思議と後に残るようなものではなくむしろ端麗です。

代わりにうっとりするような残り香が口の中に長く残り、その衝撃は20年たった今もはっきりと覚えているのです。

 

後日、これは背筋を正して飲まないといけないワインだと思い、改めてディケムを自腹で買って飲んだのですが、もちろん素晴らしいのですが、その時は以前のような感激はありませんでした。

自分で買ったディケムは新しいヴィンテージのもので、ここで私はディケムは年月をたたないと真価を発揮しないんだということを学んだのです。

お客様が持ち込んだディケムは20年以上たっていたことを覚えていますが、お飲みの場合はできれば最低でも15年は熟成させることをお勧めします。

 

ワイナリーの歴史

1593年にソヴァージュ家がイケムの部分所有権を取得し、徐々に畑を併合し、その後18世紀初頭には完全に所有権を取得します。

1785年にジョセフィーヌ ド ソヴァージュ ディケム女史がルイ アメデード リュル サリュース伯爵と結婚、それ以降リュル サリュース伯爵の子孫が継承し、管理、運営していきます。

 

19世紀半ばにはすでに無二の存在となっていて、ロシア皇帝の弟のコンスタンティン公がディケムの1847年にほれ込み、当時の価格の4倍の一樽二万フランで買い取った資料が残っています。

 

1999年に、モエ ヘネシー ルイ ヴィトン(LVMH)社が5億フランで株式の過半数を取得、2004年からはピエール  リュルトン氏が支配人に就任しました。

現在の醸造責任者はサンドリーヌ ガーヴェイ女史で、ドニ デュヴルデュー教授のアドバイスを受けながら、ワイン造りを行っています。

甘美な甘みがありますが、そのため糖分には困りませんので今まで一度も補糖をしたことがありません。

 

 

素晴らしい美食の後に、ソーテルヌを一杯飲みながらゆったり語り合おうというスタイルは現代的ではないのか、貴腐ワインにとっては逆風の時代といえます。

食生活の変化は誰のせいでもありませんが、それでなくても手間のかかる貴腐ワインには人材不足と人件費の高騰が重くのしかかり、売り上げ不振による身売りもおおく存在します。

シャトーディケムとまではいかなくても、思い出した方はコースの後のデザートに一杯の貴腐ワインを試してみてはいかがでしょうか。




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