ロマネコンティは、世界最高峰と呼ばれる高級赤ワインとして知られています。
フランスのブルゴーニュ地方のコートドニュイ地区にあるヴォーヌロマネ村で生産されています。
品質のみならず価格も世界一のランキングを常に保ち続け、名声をほしいままにしています。
ブドウ品種はピノノワールのみで、1936年にAOC認定を受けました。
ドメーヌドラロマネコンティ(DRC)の単独モノポールです。
正直にいえば、ロマネコンティの記事を書くのはあまり気が進まないのが本音です。
あまりにも高根の花だし、ソムリエ時代に数回お客様が飲んだロマネコンティを味見した程度の経験しかないし、それだってすでに10年以上前の記憶です。
ただし味見とはいえほかのブルゴーニュとは全く違う卓越性というものは感じましたし、それは今でも鮮明に覚えています。
ロマネコンティ ワイン
ワインの特徴
ブルゴーニュ地方の中でも最高の畑であるグランクリュで生産されたブドウは、最高の気温と土壌で育ちます。
粘土質と石灰質の交わる土壌だからこその複雑で奥深い味に仕上がります。
いまでこそ石の十字架と↑の紋章があるのでわかりますが、外見は地続きなので大して他と変わるところはありません。
しかし、ロマネコンティの畑は上から順に
石灰岩小石層
ピンクのマーブル模様の石灰岩質層
粘土と牡蠣の殻が堆積したカルシウム系の泥炭土層
原始海生物の堆積による硬質岩石層
などの複雑な土壌の妙がその味わいを生むといわれています。
日本と違ってブルゴーニュは冬に雨季、夏に乾季となりますので冬にたまった水分を吸い取ろうと、ブドウ樹は根を深くおろします。
ぶどう樹にとっては酷かもしれませんが、これが結果として土壌の諸要素をくみ上げているのは間違いありません。
味わいについて、あまり細かく記載すると浅はかさがバレてしまうので自分の記憶だけにとどめますと、
・不思議なことに、色合いは濃く渋みも強いのですが、味わいの基本になっているのは酸味で、この酸味がワインに一本筋の通った完成度をもたらしています。
・味わいはボルドーのような重厚さではなくてむしろ第一印象は端麗で磨き上げられた印象ですが、徐々に複雑味を出し、飲み込んだ後の残り香がふわっと広がります。
・余韻が大変に長く、口の中にいつまでも残る土のようなミネラルの印象があります。
これはロマネコンティのファンや当事者には本当に失礼かもしれませんので個人的な感想としてとどめてほしいのですが、後にスペインのヴェガシシリアのウニコを飲んだ時に、ロマネコンティに似ていると感じたことがありました。
ワインの評価
ロマネコンティはグランクリュと呼ばれる最高の畑で育てられたブドウのみを使用して生産されるため、非常に生産数が少なく希少価値が高いワインとなります。
年間生産量は6,000本に及ばないほどで、そのため価格も高くなります。
(もちろん、一番が好き、みんなが欲しいものが好きという人はどこにでもいて、そういった世俗的な欲求がロマネコンティの高騰を招いているのも事実でしょう。)
畑の栽培面積も約1.8ヘクタールと少ないのですが、そこからさらに収穫量を極端に減らし、果実を厳しく選別するため全ての果実がロマネコンティに使われるわけではないのです。
特に評価の高い年が、1990年・2005年・2008年と言われています。
価格は安いもので90万円前後となり、高価なものになると200万円を優に超えます。
アメリカのワイン専門誌である「ワイン・スペクテイター」では、ロマネコンティは「別世界」と評価され、格式の違うワインとされています。
コンティ公が独り占め?
ロマネコンティの名前の由来は、ロマネは村名になりますが、コンティは人名です。
ロマネの畑が競売に出されていた時代、素晴らしいワインを作り出すことが知られていたため所有権の激しい争いが勃発しました。
所有することで毎年素晴らしいワインが生産されるのであれば、これほど資産価値の高い投資はありません。
このワインを産み出すブドウ畑を手に入れたコンティ公は、ルイ15世の愛人であったポンパドゥール夫人と張り合い、ブドウ畑を手に入れたことで知られています。
しかし、大変に残念ですが1760年から30年間前後はロマネのワインが世に出ることは無く、コンティ公が宴でふるまうなどして消費されていました。
では、これが現在で行われたらどうでしょうか。
ロマネコンティは、例えばリリース価格を一本100万円として、6000本だとすれば60億円あれば買い占めることができます。
60億円はもちろん果てしない金額ですが、世界にはその程度はなんてことのない金額だと思う人もいます。
そのようなビジネスで成功した一人が60億円で買い占めてしまうとどのようなことが起こるでしょうか?
誰もが憧れ、口にしたいロマネコンティを一人が所有してしまうと、価格も操作できますし、なにより夢がありません。
考えたくありませんが大金持に趣味の悪い消費をされたら、ワインファンはもちろん生産者だってたまったものではないでしょう。
そのため、DRCが信頼する仲卸業者に一任し、極端に偏りがないように割り振ってリリースをしてるのです。
高価格の理由と購入のリスク
ほんの20年前は30万円前後であったロマネコンティですが、現在は100万円台でも買うことはほぼできません。
なぜこんなに高騰してしまったのでしょうか?
これに関しては、総論としては世界一の評価なのにもかかわらず、年間生産量が6000本と少ないため、希少価値が高騰をまねいたというのが一般論です。
しかし、もう少し踏み込むと、実際にロマネコンティを飲む人(エンドユーザー)よりも、投機目的で購入する仲買人の存在も付言するべきでしょう。
仲買人からすれば、100万円で買っても110万円で売れれば10万円の利益が出ますから、いくら高く買ってもそれ以上に高く売れればいいという理屈なのです。
110万円でAさんが買い、それをBさんが120万円で買い、それをCさんが130万円で買う、こうやってどんどん値は吊り上がっていきます。
こうなると誰かがババをつかまされるまで価格は上がり続けますし、いくら高くてもいいからロマネコンティを飲みたいという大金持ちはいる所にはいますので、そこがエグジットになるのです。
ただし、この現象はロマネコンティにとってはやや不幸せな傾向と言っていいでしょう。
何故なら多くの人の手に渡るということはそれだけ管理がずさんな人の手に渡る可能性が高いということだからです。
↑の図のように、ワインは極めてデリケートなので一度でもワインへの理解のない人の手に渡るとすべてがパーになってしまいます。
失礼な表現かもしれませんが、投機目的でロマネコンティを買う人は高値で売れればそれでいいため管理はずさんなことは当然予測できます。
ロマネコンティだけでなく、いわゆるカルトワインと言われる希少価値によって値が吊り上がったワインは信頼のできる所から購入することが重要です。
一つのリスクとして、押さえておいてください。
では、↑の状況で仮にロマネコンティを飲むときに品質が劣化していた場合に、だれが責任をとれるのでしょうか?
日本の民法上、損害賠償請求は債権者側に挙証責任がありますので、仮に請求ができる場合でも、ロマネコンティが品質劣化をしていることを飲み手が立証しないといけないのです。
では、実際にどうやって立証するのでしょうか?
裁判の時まで取っておくことはできませんので、実質的には不可能ですし、裁判官からすれば「そんな案件持ってこないでくれ」が本音かもしれません。
つまり、エンドユーザーである飲み手が泣き寝入りをすることになるのです。
合わせる料理
ロマネコンティは、極端に完成度を高め、濃縮感と複雑性があります。
また、特殊な存在感のワインのため、「この料理が合う」というとらえ方はなじみません。
そのため楽しむ側が特殊なシチュエーションで、一生に一度の思い出を作ろうという心意気で飲むという心構えこそが最大のポイントです。
そのうえで、あえて検討すると、まず、合わない料理は魚介料理全般です。
さらに、特殊な事情でもない限り、家庭料理もワインの格が違うので合わないでしょう。
ミネラル感が強く、さらに複雑性も際立っていますので、赤身肉のジビエのサルミソースなどは一つの候補でしょう。
プライベートな空間で楽しむ?
もっとも、正直な話、ロマネコンティはチーズやワインに合うおつまみを数種類用意し、プライベートの環境の中で、ワイン単体で楽しむのがベストかもしれません。
前述のような赤身肉のジビエ サルミソース等は高級レストランでないといただけません。
では、そのようなときに隣のテーブルのお客様がワインに理解のない人である可能性だってあるでしょう。
実態論として、うなずけるソムリエさんや関係者さんも多くいらっしゃるのではないでしょうか。
とはいえ、レストランは公共の場でもあります
「こっちはロマネコンティを飲んでいるんだから気をつかえよ」
というのも相手からすれば知ったこっちゃないということにもなりかねません。
そのため何よりも飲むときの環境を最優先させるのがベストな選択と言えるでしょう。
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