フランスワインの魅力は、なんといってもバリエーションの豊富さとワイン文化の根強さでしょう。
日本のワインブームもまずはフランスワインから入りましたし、グローバル化された世界のワイン文化もフランスワインは絶えず注目の的です。
これからワインを勉強しようという人も、とりあえずワインの全体像を知ろうという人も、フランスワインの知識は最低限あったほうが理解は深まりますし、避けて通ることはできません。
なぜフランスワインは世界のワインをリードし続けているのでしょうか?
もちろん品質の高さと、現代の食生活文化にピッタリであったことがおおきな要因でしょう。
また、世界に先駆けてワイン文化を外国に発信しようとした先駆者であることは言うまでもありません。
1855年にはボルドー メドックの格付けが決められ、その格付けは現在でも評価のもとということからも、200年近く前には現在のワインの原型が出来上がっていたことがうかがえます。
歴史も深く、世界の食文化の変遷にも折り合いが良かったということもありますが、一番の理由はその多様性ではないかと言われています。
辛口の白ワインから甘口の白ワイン、
軽めの赤ワインからフルボディの赤ワイン、
貴腐ワインやヴァンジョーヌと呼ばれる黄色ワインなど、
世界のワインのタイプのほとんどはフランスワインで説明ができるほどのバリエーションがあります。
さらに、価格や知名度もそれこそ世界中のワインファンが欲しがる高価で有名なワインもあれば、日常使いのスーパーでも見かけるような廉価でおいしいワインまで様々です。
また、フランスはワイン以外にもフランス料理が世界のグルメを虜にしているため、そのマリアージュとしてもワインはなじみやすいのです。
ここでは、フランスワインの代表的な生産地域と、その特徴を、できる限りわかりやすく紹介します。
最初はどうしても覚えることが多いように感じますが、最後までざっくりとお読みいただければなんとなくの基礎知識と全体像はつかめるでしょう。
是非ご参考いただき、日々のワイン生活に生かしてください。
フランスワインの基礎知識と全体像
生産地域ごとに理解しよう
フランスワインは、北限のエリア以外では、ほぼ全域でワインを生産しています。
そして、それらの生産地域はエリアごとに見事に特徴が分かれていて、ソムリエ試験でも必ずエリアごとに覚えることになります。
一般のワインファンであっても、このエリアごとの区別は押さえておくべきで、それが最も覚えやすい方法といえるでしょう。
ただし、それらのエリアの中には実際には日本ではほとんど見かけることのないワイン生産地域であったり、レアすぎるワインの生産地域もあります。
そのため、全てのエリアを網羅的におさえるのは逆にワインの敷居を高くしてしまうので逆効果と言えます。
日本でなじみがあり、かつ、押さえておいたほうがワインの楽しみが一気に深まるエリアに絞って覚えるのが得策ですね。
・ボルドー
・ブルゴーニュ
・シャンパーニュ
・ロワール
・コートデュローヌ
・南フランスのワイン
ソムリエやソムリエ試験を勉強している方には大胆なエリア分割に思われるかもしれませんが、基本的にはこの6つをおさえることでフランスワインの理解度は飛躍的に上がります。
前述しましたようにフランスワインの生産地域によっては日本でのワインライフにほとんど無関係のところもありますので、これだけおさえればほぼほぼ大丈夫でしょう。
ご安心ください。
なお、よくよくフランスの生産地域を検討すると、川の流域に生産地域が多いことに気づくと思います。
これには様々な説がありますが、有力なものは、
紀元前100年ころの軍人シーザーが、敵対する相手が川を遡上して川岸の森林に潜み奇襲をかけたことへの対策として木を伐採し、代わりにブドウ樹を植えたから、
とされています。
ブドウであれば隠れるほどの樹の高さはありませんから、きっと相手国はうまいことをやられたと嘆いたことでしょう。
一方で、川の近くに栽培されたことで流通にも都合がよく、これがのちにワインの発展を大きく助けることになるのです。
2000円~3000円程度のワインで楽しもう
ここはこれまでのスタンスと若干矛盾がありますが、ワインの敷居を低くして親しみやすく覚えてもらいたいという反面、「じゃあ敷居は低ければ低いほうがいいのか」という理論にはさすがに限界があります。
敷居を低くしようと思えば、ワインの価格をできる限りおさえて楽しもうということになりますが、さすがに一本1000円未満のワインではなかなか特徴を感じにくいかもしれません。
それぞれのワイン生産者はもちろん善意でワインを生産していますが、廉価なワインはどうしても個性に乏しく、ワインの魅力を語るにはやや不適切なのです。
もちろん1000円未満のワインであっても十分に楽しめるワインも多数ありますが、それはもともとの個性が廉価で楽しめることを目的に生産されているもので、最初から狙って選ぶものではありません。
そこで、できれば一本のワインを2000~3000円の価格帯に絞り、その中で好みにワインを探すことをお勧めします。
この価格帯であれば、ボルドーやブルゴーニュ以外の有名な銘柄でない限り見つけることは難しくはないはずです。
さらに、個性や特徴も見出しやすい価格帯なので、ワインを覚えるにはちょうどいい価格帯なのです。
(ボルドーやブルゴーニュ、シャンパーニュで個性を楽しもうという場合は、できれば一本を4000円~5000円くらいで楽しむことをお勧めします)
料理と一緒に楽しもう
フランスのワイン文化は料理の発展とともに広まったといっても過言ではありません。
フランスは地方料理や家庭料理が体系立てて確立されていて、それらに合わせるべくワインが日常に溶け込んでいるのです。
これは何を意味するのかというと、ワインを単体で楽しむのではなく、ワインを料理と一緒に楽しむというスタイルが根付いているということです。
生産者もそのあたりのことをもちろん理解していますので、おのずと料理に合わせやすい味わいになっているのです。
用心深いひとのなかにはここで、
「そりゃフランス料理とフランスワインは相性がいいに決まっているよ」
こう思う人もいるかもしれません。
しかし、現在の食文化は本当にボーダーレスで、フランス本土でも日本の食材は日常のように使われています。
私がフランスで研修を受けた星付きレストランでも、ワサビや醤油は実際にメインディッシュのソースに使われていました。
また、ワインと料理のペアリングは日々研究が進み、日本の家庭料理にも十分に合わせることができるとの意見が多数派です。
ところで、日本食は世界中でブームになっていて、居酒屋も世界各国で見かけるようになり、そこでは普通のことのようにワインも飲まれています。
世界中の居酒屋でワインも楽しまれていることを考えると、日本の居酒屋のほうがワインについては遅れている、という見方もできるのです。
フランスワインの生産地域
ボルドー
ボルドーはフランスの西部、ジロンド川流域にある広大なワイン生産地域です。
おそらく世界でもっとも有名なワイン産地でしょう。
シャトーラフィットロートシルトやシャトーマルゴーなどの超有名なワインから並質のワインまで、フランス経済を左右するほどの規模の産地になっています。
ボルドーの特徴は、なんといっても「高品質なワインを大量に生産する」というところでしょう。
例えばブルゴーニュワインであれば、ボルドーのワインよりも高価なものも一部ありますが、生産量はボルドーに比べると微量です。
生産量がわずかであればどうしても希少価値があり、値が吊り上がってしまうこともありますが、ボルドーはそうではないにも関わらず値が高いのです。
ブドウ品種は、赤がフルボディのワインを、カベルネソーヴィニョンとメルローを主体に造られます。
白ワインは軽めのものからしっかりしたつくりのワインまで、ソーヴィニョンブランとセミヨンを中心に造られています。
ボルドーは、主なエリアとして、
メドック地区
グラーヴ地区
サンテミリオン地区
ソーテルヌ地区
に分類されます。
ところで、ボルドーは、いまでこそ世界に知られるワイン産地としてそのトップに君臨していますが、過去にはいくつかの苦難の時代があったのです
特に20世紀前半は二度の世界大戦と世界的不景気によって、逆にシャトーを所有することで維持費などの不利益のほうが多かったのです。
そのためシャトーの多くはころころと所有者を変更し、荒れ放題になったろところも多かったのです。
ボルドーワインの歴史は、こちらをご覧ください。
ブルゴーニュ
ブルゴーニュは、ボルドーとともに世界の2大生産地域としてそのクオリティを知られています。
ロマネコンティやシャンベルタン、モンラッシェなど、世界のグルメが尊敬してやまないワインが生産されています。
前述しましたように、ボルドーはクオリティも高く、かつ生産量も多いのに比べると、ブルゴーニュはクオリティはボルドーと肩を並べますが、生産量は少ないところに特徴があります。
またブドウをブレンドするボルドーに比べて、ブルゴーニュはほとんどが一つの品種しかつかいません。
赤ワインがピノノワール、白ワインがシャルドネで、例外的にボジョレー地区はガメイという品種が使われます。
単一のブドウ品種ということは、ブドウの栽培状況がそのままワインに表れやすいということです。
シトー派の修道僧が現在のブルゴーニュワインの基礎を造ったとされますが、彼らはワインを先鋭化させて完成度を高めることに成功します。
先鋭化させることはつまり、ブドウ品種を絞り込み、土地を研究して区画畑を分けることを知ります。
それがクリマであり、クロという区画畑なのです(詳しくはリンク先をお読みください)。
そのため、ミクロクリマ(マイクロクライメート)と呼ばれる局地的気象条件によってワインには様々な個性が生まれます。
ほんの数メートル違う畑で栽培されたのにも関わらず価格が倍違うということもざらにあります。
ブルゴーニュワインは、ワインファン垂涎の的ではありますが、初心者でも取り掛かりやすく、特徴をつかみやすい傾向にあります。
村名クラスであれば3000円程度でも十分においしいワインがありますので、ワインショップでぜひ尋ねてみてはいかがでしょうか。
ブルゴーニュはシャンパーニュと同様にワイン産地の北限にありますので、当然栽培限界の問題に直面します。
通常農産物は、栽培限界のエリアでは複数の品種を栽培したり、あるいは交配品種などを用いることでリスクヘッジをします。
しかし、ブルゴーニュではこれとは真逆の選択がされたのですが、これを不思議に思いませんか?
そこには、”テロワール”にこだわるブルゴーニュの生産者のワイン造りへの思いが深く関係しているのです。
シャンパーニュ
シャンパーニュ(日本ではシャンパンと呼ばれています)は、ランスを中心とする世界一のスパークリングワインの生産地域として有名です。
パリの北東に位置していて、冷涼な気候なためぶどうの酸味が強く、糖分が上がりにくい特性を考慮して生まれたのがシャンパーニュと言われています。
シャンパーニュは、なんといっても世界のお祝いの席の圧倒的なシェアを誇る知名度と、その知名度に負けない品質の高さが魅力でしょう。
スパークリングワインはどこの国でも生産していますが、シャンパーニュは特別な存在なのです。
ここで一つ、イタリアワインファンには怒られてしまうかもしれませんが、一つの小話があります。
イタリアではスプマンテというスパークリングワンを全土で生産しています。
イタリアは母国の文化を重んじる国なのに、本当のお祝いの時はシャンパーニュを開けるとのことなのです。
シャンパーニュは、ピノノワール、ピノムニエ、シャルドネの3品種を用いて様々なタイプのワインを生み出しています。
シャンパン製法と言って特殊な造り方をします。
製造に技術が大きく影響しますのでメーカーの影響が強く出るところも特色の一つです。
シャンパーニュは、歴史的に早い段階でマーケットの強い支持を得た結果、常に需要が供給を大きく上回ることになります。
こうなると供給側はできる限り安定してワインを生産することが求められ、そのためいくつかのほかの産地と違う作り方を決断することになるのです。
ロワール
ロワールは、パリのやや南に位置するロワール川流域の生産地域です。
ロワールワインは、さっぱりしていて香り高く、かつ赤ワインは渋みも押さえめなので日本料理や日本の家庭料理との相性も研究されています。
ボルドーやブルゴーニュのワインは、完成度が高すぎて家庭料理には正直不向きです。
しかし、ロワールのワインは品質は高いのですが、気軽に飲める雰囲気がありますので、ご家庭でのワインライフにはピッタリなのです。
ロワール川はフランス一の長さを誇る川なので、その生産地域も広大で、四つに分割されます。
・ペイナンテ
ミュスカデというブドウからさっぱりとしていて飲みやすいワインを生産しています。
シュールリーという製法を用いて独特の酵母のような香りをワインにつけることで知られています。
価格も安く、かつ、品質も安定していますので、辛口のワインを勉強したい、という方は、まずはミュスカデからお勧めします。
・アンジュー・ソミュール地区
ロゼダンジュという気軽で華やかな印象のロゼワインの産地として有名です。
ロゼワイン以外にもヴーヴレーという白ワインや貴腐ワインも有名です。
白ワインがほとんどですが、ソミュールシャンピニーという赤ワインはカベルネフランを使って軽めの赤ワインを生産しています。
白ワインはシュナンブラン種を主体に辛口から甘口までミネラル感の心地よいワインを生産しています。
・トゥ―レーヌ地方
シノンやブルグイユといったロワール川を代表する赤ワインを生産しています。
カベルネフランというブドウを使って軽めからフルボディのワインまで生産しています。
青ピーマンの香りが強く、これが特徴だったのですが、野菜の香りはネガティブにとらえられがちなので、最近の生産者はこの香りを抑えるように工夫をしているようです。
・サントル・ニヴェルネ地方
フランスを代表する辛口ワインのサンセールやプイイフュメというワインを生産しています。
ブドウ品種はソーヴィニョンブランを用いて、主に軽めのさっぱりしたワインが造られています。
もともとソーヴィニョンブランはグレープフルーツの香りとハーブの香りが特徴で、酸味もさわやかで高級レストランでグラスワインでよく用いられていました。
最近は日本料理との相性の良さも認識されていて、ご家庭でも楽しまれているようです。
コートデュローヌ
コートデュローヌは、フランス中部のリヨンから南に流れるローヌ川流域のワイン産地です。
リヨンから南は本格的に日照量に恵まれ、ワインはどんどんスパイシーでフルボディになります。
赤ワインはシラーというブドウ品種を主体にコートロティ、エルミタージュ、コルナスなどの高級ワインを生み出します。
白ワインはヴィオニエという品種からトロピカルフルーツの香りとトロッとした印象のワインを生み出しています。
特にシラーを使った赤ワインはソムリエ試験でも頻出のワインで、特徴もとらえやすいのでお勧めです。
南フランス
↑プロヴァンスのロゼ
南フランスと大きくくくりましたが、実際には
プロヴァンス地方
ラングドック・ルーション地方
南西地方
と分類できます。
前述したローヌ地方と同様、日照量が多いためブドウの新陳代謝がすすみ、色が濃く、アルコール分の高いワインに仕上がりやすくなります。
とはいえ、日照量が強いとブドウ本来の個性が出すぎてしまい、単一のブドウだと好みが分かれてしまいます。
そのためほとんどのワインは複数のぶどうをブレンドして造るのです。
この地域は、元々は大量生産型の日常消費ワインのイメージが強かったのですが、品質の高さと個性を前面に押し出したブティックワイナリーも増えました。
それらのワイナリーの中には世界的に評価を受けるワインも多く、お宝を探し出す楽しみのある地域とも言えます。
スイス寄りの地域
↑有名な黄色ワイン
ジュラ・サヴォワ地方を中心にアルプス山脈寄りのエリアもワイン産地として知られています。
標高が高く、気温が上がりにくいので赤ワインの生産よりもさっぱりとした白ワインの生産に向いています。
また、もともと山脈寄りのエリアは流通に不便なため、チーズや加工肉(ソーセージやハム)が食文化に溶け込んでいました。
そのためそれらの食材に合わせやすいようにワインが造られていて、そのマリアージュを楽しむのもいいですね。
白ワインはおもにシャスラというブドウから造られます。
また、ヴァンジョーヌといって、産膜酵母を付けて独特のシェリーのようなワインを生産しています。
日本ではあまり見かけませんが、そのぶん見つけたときはぜひ試してみてはいかがでしょうか。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
フランスワインは、覚えようとするとこれらの分類をさらに細かく分けてそこから膨大なデータが待っています。
しかし、ポイントをおさえればこれらだけでほぼほぼ特徴は押さえたといっていいでしょう。
もっと詳しく知りたくなった方は、個別のリンク先をご参考ください。
皆様のワインライフが、より良いものとなりますように、そのお力添えに慣れればこれ以上の幸せはありません。
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