ROSE D’ANJOU(ロゼダンジュ)はフランスのロワール地方の中でも、アンジュ地区で生産されるロゼワインです。
ロワール地方はもちろん、数あるAOCワインの中でも特に有名なロゼワインで、質量ともにフランストップクラスでしょう。
フランスの三大ロゼワイン(ロゼダンジュ、プロヴァンスロゼ、タヴェル)と称され、ロゼの代名詞と言われるほど世界的にも人気の高いワインです。
美しい色調と飲みやすくさわやかな口当たりで、ワインに親しみがない方にも受け入れられやすい味わい。
日本料理や中国料理との相性の良さも指摘されていて、日本の食文化にもなじみやすい希少なワインです。
リーズナブルではありますが味わいは上質で、食前酒として、あるいはパーティーでのワインにも強くお勧めします。
なお、この地区には似たロゼのアペラシオンがあるのでここで押さえておきましょう。
ロゼダンジュ→ACは1936年。アンジュー地区全域をカバーできる広域のワインで、地元産のグロローが主要品種です。甘口やうす甘口。
カベルネダンジュ→ACは1936年。使うブドウはカベルネフランとカベルネソーヴィニヨン。片岩質土壌に向いていて、そのため生産地区はロゼダンジュに比べて小さくなります。甘口やうす甘口。
ロゼドロワール→ACは1974年。アンジューだけではなくてソミュールやトゥ―レーヌ地区にも生産地域が伸びています。使うブドウはピノノワールとコットです。これは辛口。
ロゼダンジュ
栄光と凋落の20世紀
ロゼダンジュは、特に20世紀にわたって栄光と凋落を多くの消費者に見せたワインといえます。
1950年代頃から世界的なロゼワインブームが起こり、中でもポルトガルのマテウスロゼが大ヒットをしたのです。
これに合わせるようにロゼダンジュも消費量を伸ばし、北ではロゼダンジュ、南ではタヴェルがロゼワインブームをけん引します。
特にロゼダンジュはかわいらしい外観と果実味、飲みやすいソフトな口当たりが人気で世界中でもてはやされ、引っ張りだこでした。
ところが1980年代、世界的に食の嗜好の風向きが変わります。
流通や情報のグローバル化が進み、趣味嗜好はより直接的で本質的なものへとシフトをし始めます。
ワインの消費者層もすそ野が広がるとともに飲みやすくてキャッチーなものよりも、低価格であっても味わいはクラシックなものが求められるようになるのです。
こうなるとロゼダンジュを含めたこれらのワインの人気は急速に減退し、辛口志向へのシフトは歯止めがきかず、現在では過去の栄光となってしまったのはその通りでしょう。
ただしこれは何もロゼダンジュが悪いのではなく、世界的な食の嗜好が変わっただけなのです。
事実ロゼダンジュもマテウスロゼも、ドイツのマドンナ(白リープフラウミルヒ)も含めて、それまで一大マーケットだったブランドは軒並み低迷します。
(比べるとタヴェルはもともと辛口で、かつブームの影響も少なかったため、人気凋落ということにはならなかった)
当サイトのユーザー様には釈迦に説法ですが、人間の嗜好の変化は難しく、これが世界規模となるともはや努力とかそういうものではどうしようもないものでしょう。
これらの事情から、ロゼダンジュの生産者は徐々にほかの辛口ワインへシフトし、逆に現在残っている生産者は良識と情熱のある上質なところに先鋭化されたのです。
その意味では今こそ注目しておくべきワインといえますし、最近になって再びロゼを見直そうという流れも出てきています。
また、もっと消費者の経験値が増えれば、逆に「クラシックワインも好きだけど、私は飲みやすくてキャッチーなワインのほうが好き」という層ができてもいいでしょう。
近いうちにロゼダンジュが人気を回復する日も来るかもしれません。
ブドウ品種と特徴
ロゼダンジュはこの地方の固有品種であるグロロ種(GROLLEAU)のブドウを主体として作られています。
グロロは果皮が濃い紺色、カラスの羽に似ていることからフランス語のカラスという意味であるgrollから名付けられました。
ROSE D’ANJOUは透明感あるサーモンピンク色のロゼワインです。
やや甘口で、爽やかさとフルーティーさを合わせ持つ味わいとなります
ベリーやサクラのようなアロマを感じるのが特徴です。
AOCワインの中でも安価なワインで、この地域のミュスカデやボルドーのアントルドゥメールなどと共にデイリーワインとして愛されています。
世界最優秀ソムリエのジャン・リュック・プトーも最初に美味しいと感じたワインと語るほど、このワインからワインの美味しさを知ったフランス人が多いと言われています。
普段ワインを飲まない人にも飲みやすく、女性にも人気の高いワインです。
提供温度と合わせる料理
飲み頃温度は6~8℃となります。
アロマティックさと僅かな甘さのある優しい味わいなので、食前酒やデザートと共に楽しむこともできます。
また、意外かもしれませんがオンザロックで飲んでもおいしく、例えばランチにボトル一本のロゼダンジュを二人でオンザロックで楽しむのも、カップルには最高でしょう。
また香辛料の効いたエスニック料理や、優しい味の和食との相性も良く、相性の良い料理の幅はとても広いと言えます。
ロゼダンジュはさわやかな果実味と酸味、そしてほんのりとした甘味と渋味がありますので、和食であれば例えば肉じゃがなどにも合わせやすいでしょう。
意外に思うかもしれませんが、ロゼダンジュは中華料理との相性も検討されていて、有名な麻婆豆腐とロゼダンジュの組み合わせは一度試してみるといいかもしれません。
ロゼダンジュはほんのりとした甘みがありますので、麻婆豆腐のスパイスの香りと味わいを中和させてくれ、これが食欲をそそるのです。
ワインブックススクールのお知らせ
ワインブックスメディアは、ワインブックススクール(WBS)が運営しています。
WBSは月額2200円のみ。ソムリエ・ワインエキスパート試験合格の可能性を最大化します。
オンラインなので、いつでもどこでも誰でも参加できます。
これを機会にご利用ください。
【月額月額5000円以下の店舗向けソムリエサービス】
ワインブックスのAIソムリエサービスはこちら→