コルトン・シャルルマーニュ(CORTON CHARLEMAGNE)と言えば、ブルゴーニュの白ワインの代表です。
コートドボーヌ地区の北側で生産されている白ワインのグランクリュで、日本ではあまり知られていないもののモンラッシェに続く世界的にも有名なグランクリュで、間違いなく超一級の品質を誇ります。
おそらくブルゴーニュ最高の白ワインをあげるとすれば、モンラッシェやムルソーとともに必ず名前が入るでしょう。
もっとも、ムルソーとモンラッシェは近接しているのに対してコルトンシャルルマーニュはぽつんとたたずんでいるところにミクロクリマの妙を感じます。
【動画でも解説しています】
名前の響きから、ほとんどをアロ―スコルトンで産出されているようなイメージがありますが、3分の1はペルナンヴェルジュレスで産出されます。
コルトンシャルルマーニュを生産するクリマは、その周りのほとんどを赤ワインで埋められていて、ポツンと間違ったように白のエリアがあるのです。
日本ではシャブリやムルソー、モンラッシェの陰にあってあまり知られていないワインですが、名実ともにそれらと肩を並べるのがコルトンシャルルマーニュです。
シャブリは火打石、ムルソーは柔らかく植物的、モンラッシェは鋼のようだ、と言われます。
ではコルトンシャルルマーニュはと言えば、辛口でありながら蜂蜜を思わせ、時にナッツのような香りと溢れるばかりのミネラル感がその特徴でしょう。
ムルソーやモンラッシェは近接しているのに対してコルトンシャルルマーニュは孤立していて、これが独特の特徴を生み出しています。
味わいも超一級ワインの中でも独特で、この手のワインを飲んだ方には一度お試しいただくことをお勧めします。
(ただし、生産者がおおく、中には検討が必要なものもあります)
主要な所有者として、
ルイラトゥール(9.64ha)、ボノーデュマルトレイ(9.50ha)、ブシャールペールエフィス(3.67ha)、ロラン・ラぺ(3ha)、コシュデュリ(0.34ha)
があります。
コルトンシャルルマーニュ
語源
コルトンシャルルマーニュのシャルルマーニュはカール大帝で、これはさんざん伝わっているのでここでは割愛します。
では、コルトンとは何が語源なのでしょうか?
コルトンは、CURITIS D’ORTHON (クルティス ドルトン)が短縮したと考えられています。
CURITISは、フランス語の古語で「家の周りの管理区画」をさしていて、現在のドメーヌの意味合いに近い言葉です。
ORTHONはこの領域の土地を領有していた初期のローマ皇帝オルトンのことです。
地勢
コルトンシャルルマーニュは、 ラドワセリニー、アロクスコルトン、ペルナンヴェルジュレスの3村にまたがっていて、これが滅法わかりにくいのです。
夢のない話ですが、最近はコルトンの赤よりもコルトンシャルルマーニュのほうが高値で取引されるため、多くの所有者はピノノワールをシャルドネに改植する傾向があります。
これが地質的に合理性があればいいのですが、ワイナリーもビジネスなので、そうでない場合もありますので検討が必要でしょう。
北東から南西に伸びる緑の丘が有名なコルトンの丘で、これを目安にするとこの後が理解しやすいです。
それでは、順に見てみましょう。
ペルナンヴェルジュレス
わかりやすいように、まずはコルトンの丘をとらえてみましょう。
ペルナンヴェルジュレスの西の村境にみどりの草履のような形の森がありますが、これがコルトンの丘の頂上です(防風林になっている)。
コルトンシャルルマーニュというとどうしてもコルトンの丘というイメージがありますが、その頂上はペルナンヴェルジュレスにあるということになります。
コルトンシャルルマーニュは丘陵の斜面上部に植えられていることが多く、そのためペルナンヴェルジュレスの区画は西向きということになります。
この地質条件ですと日差しは少なく、そのため劣ったヴィンテージの場合は購入を検討する必要があるということです。
しかし、その分といってはなんですが土壌には小石が混じり、そのため水はけがよくなっています。
高価で取引されるアン・シャルルマーニュが斜面上部にあって、ボノーデュマルトレイのコルトンシャルルマーニュはここにあります。
(この地質上の優位性に目を付けたのがカリフォルニアのスクリーミングイーグルです)
アロクスコルトン
コルトンの丘から南東に伸びるのがアロクスコルトン(アロ―スコルトンともいう)です。
この区画は見てお察しのとおり南東向きの斜面で日照に恵まれていてます。
さらにこの村の北から東にかけてはジュラ紀中期の土壌でほかの区画とは異なっていて、土壌は赤褐色の鉄分を多く含み出来上がりは他の村とは風合いが変わってきます。
この表土が厚く、土壌がもっとも貧相で養分が少なく、ワイン用のブドウ以外ではとても農家さんは選ばないような土地です。
ところがワイン用のブドウとなるとこれが一転、びっしりと計画的に植えられたブドウは競争させられて根を伸ばし、これが結果としてワインに深みをもたらすのです。
ここの区画のコルトンシャルルマーニュをお飲みの際に、「この一杯は、どれだけの競争をさせられたのだろう」と思いをはせるのもいいかもしれません。
ラドワセリニー
これがラドワセリニー。
このようにラドワセリニ―は、実際にはコルトンシャルルマーニュの区画は村の北西のほんの一部です。
畑の斜面は東を向いていて絶好のロケーションなのですが、アロ―スコルトンの陰に隠れて損をしているかもしれません。
ブドウの品種
ブドウの品種はシャルドネで、コルトンシャルルマーニュが植えられた区画は標高も高く水はけがよく、ブドウ造りに向いた土地なのです。
さまざまな地質の断層が存在する土壌で、石灰岩、泥灰土などが層になっています。
ミネラルを豊富に含んで水はけの良い土壌だからこそ、豊潤なブドウが生産され、ワインにもミネラルを感じられます。
グランクリュ街道沿いにあるコルトンの丘はコートドボーヌのシンボルとなります。
コルトンの丘の全てがコルトン・シャルルマーニュになるのではなく、コルトンの丘にある26区画のうちでも9区画のみとなっています。
コルトン・シャルルマーニュの特徴
コルトンシャルルマーニュは広大で、地質的に変化に富むためティピシティをまとめるのは難しいです。
とはいえ、面白いものでムルソーやピュリニーとは明らかに違った骨格があります。
堅く、引き締まった酸味と塩味を感じさせるようなミネラルはコルトンシャルルマーニュならではでしょう。
淡い緑色を帯びたような金色の白ワインで、熟成と共に琥珀色となり、黄色になります。
熟成は樽で行われるブルゴーニュ的なスタイルです。
アロマは柑橘やパイナップル、バター、シナモンなどのアロマで、焼きリンゴや蜂蜜なども感じられます。
シャルドネを使用しているので辛口になりますが、ブドウが凝縮された品のあるワインです。
筋の通った酸が感じられ、強烈なミネラルの印象とともに極上の舌触りを楽しめます。
歴史
中世ヨーロッパにおいて平定と統一をめぐり戦争にあけくれたカール大帝は、単なるいくさ上手の英雄ではなく、文明や学術の担い手でもありました。
フランスではこの地を所有していて、775年にソーリューの寺院に寄進しました。
カール大帝はフランスでの呼び名がシャルルマーニュのため、コルトンシャルルマーニュとなったとされています。
なお、カール大帝にはご覧のとおり立派な白ひげがありますが、赤ワインを飲むと髭が赤くそまるため、聡明だった第四婦人のルイトガルドが白ワインを勧めたとされています。
その話が事実ならば何ともかわいらしいですが、実際にはカール大帝はビールやシードルのほうが好きだったとする文献もありますので、話半分でいいかもしれません。
合わせる料理
コルトンシャルルマーニュは他とは違う風味を持ち、唯一無二のワインです。
白ワインの中でもとびぬけて凝縮感があり、精緻さと奥深さを兼ね添えた味わいです。
そのためご家庭の料理よりもシェフが腕によりをかけて仕上げる完成度の高いレストランの料理がふさわしいでしょう。
例えばオマールエビを現代的に仕上げたような料理↑や、フォワグラを使った前菜などに合わせやすいでしょう。
フォワグラの独特の苦みとコクは、コルトンシャルルマーニュの風味の強さによく合います。
また、酒質の強さから肉料理とも合わせやすく、「料理は肉がいいけどワインは白」というときこそ試していただきたいワインです。
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