ポートワイン(PORT WINE)は(ポルトガル語ではヴィーニョ・ド・ポルトVINHO DO PORTO)は、ポルトガル北部、ドウロ河上流域のアルトドウロで生産し、河を下ったポルト港から出荷されるワインです。
ブドウ果汁の段階でアルコール(ブランデー 現地ではアグアルデンテともいいます)を添加する酒精強化ワインとなり、日本の酒税法では甘味果実酒となっています。
14世紀中頃から生産が始まり、18世紀ごろにポルト港から大量にイングランドに輸出されたことより、ポルト港のあるポルトの名前からポートワインと呼ばれるようになりました。
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空路ができる前は、海路が世界流通の最先端でした。
その航海のときに、一般的なスティルワインだとどうしても品質の劣化があり、荒くれものの海の男たちから評判が悪かったのです。
そこで考えたワイン生産者は、長期間の貯蔵に耐えうるワインにするべく蒸留アルコールをワインに添加します。
こうすることでワインは航海にも耐えうる酒質を持つようになるのです。
さらに、海の男たちは案外甘いものを欲しているところに目を付けた生産者は、
「それだったらアルコール発酵が始まる前にブランデーを添加して甘口ワインに仕上げよう」
と甘口の酒精強化ワインを造ったところ、これが大好評だったのです。
ポートワインは赤と白の2種類があり、赤はその色の美しさから「ポルトガルの宝石」と呼ばれています。
ポートワイン
英国人が造ったワイン?
ポートワインのブランドをここでざっくりと5つ挙げてみましょう。
・テイラーズ(TAYLOR’S)
・サンデマン(SANDEMAN)
・ダウズ(DOW’S)
・グラハムス(GRAHUM’S)
・スミス ウッドハウス(SMITH WOODHOUSE)
これらはポートワインを代表する生産者ですが、ポルトガルのワインであるにも関わらずすべて英語名になっています。
実際にポートワインの生産者を訪ねてみてもガイドはおろか、酒造りの親爺もほとんどすべて英語がペラペラで英国文化が深く根付いていることに驚かされます。
これは何故でしょうか?
もともと英国は早くからポルトガルのワインを輸入していたのですが、ボルドーよりも海路が不便で、かつ味わい的にもボルドーと比べてパッとしなかったのです。
しかし英仏間の政治的な問題でボルドーワインの輸入に制限がかかり、そうこうするうちにメンシェン協定という通商条約がポルトガルとの間で結ばれます。
英国はポルトガルのワインの輸入を推奨し、そして輸入業者に各種の特権を与えるのです。
こうなると英国内でポルトガルのワインに注目があつまり始めます。
そして偶然にも、それまでの流通経路にもアドバンテージが見いだされるのです。
もともと英国はニューファンドランド沖のタラをとってポルトガルに卸す航路があって、それまでは①と②のみだったのですが、「それだったらついでにワインを持って帰ろう」という③のアイデアが生まれます。
③の航路は一石二鳥で、これを利用することで都合も良かったのです。
(タラはポルトガルではバカリャウと言って国民的な人気の干タラの原料となります)
そのうち蒸留の技術が発見されるとブドウ果汁に添加して甘口ワインができるようになり、これが英国人の味覚に見事にハマります。
こうなると英国の企業はこぞってポートワインに産業投資をし、そしてイギリス人の業者の巣となるのです。
なぜポートワインは甘口なのか?
前述のようにポートワインはブドウ果汁にブランデーを添加してアルコール発酵を止めることで甘口ワインを造ります。
ただしこれがイメージしにくく、いまいちピンと来ていない人は多いかもしれません。
通常のワインは発酵が始まって時系列が進めば進むほど発酵によって糖分は少なくなります。
しかしポートワインはアルコール(ブランデー)を発酵途中で加えることで発酵が止まります。
こうすることでポートワインには甘みがあって、かつアルコールによるボディも感じるワインとなるのです。
この「甘くて強いワイン」は昔のイギリス人に大いにうけたので、世界的な名称も英語読みでポートワインとなってしまうのです。
ブドウの品種
ポートワインは、ポルトガル北部のアルト・ドウロ地区がポートワインの法定区域と政府によって定められています。
そのため、この地区で栽培されたブドウを原料とした酒精強化ワインのみがポートワインの商標を認められます。
また、ポルト市内にあるヴィラ・ノヴァ・デ・ガイアにて熟成が行われることも規定付けられています。
トゥ―リガ ナショナル(touriga nacional,)
ティンタ ロリス( tinta roriz)
トゥ―リガ フランチェーザ(touriga franca)
ティンタ バロッカ(tinta barroca)
ティント カン(tinta cão)
などがもっぱら用いられます。
酒精強化ワインなので、一般的なワインよりもアルコール度数が高く、アルコール度数は20度前後となります。
そのため保存性に優れており、一度封を切っても風味が急激に劣化することもなく長期保存が可能となります。
ポートの特徴
ポートワインの最大の特徴と言えば、非常に甘い甘味です。
この甘味は、糖分がアルコールに変化する前にアルコール度数77度のブランデーを加えることで発酵が停止されるからです。
この独特な製法によって甘味と独特のコクが生まれます。
赤ワインは非常に美しいルビー色のもの、もしくは褐色のものとがあります。
一方白ワインは程良い酸味が感じられます。
熟成されればされるほど香りが芳醇になり、まろやかになっていくことも特徴と言えます。
ポートの色別のカテゴリー
ポートワインには大きく分けてルビーポート、トーニーポート、ホワイトポートの3つの種類があります。
赤色、褐色、白色の3種類となっており、味わいから特徴や醸造過程も異なってきます。
同じワインでも全く違ったものとして楽しめます。
ルビー
鮮やかなルビー色の赤となり、「ポルトガルの宝石」と呼ばれているワインです。
ポートワインの中でも定番タイプのものとなり、多くの人に愛されています。
非常に力強い味わいながらも、フルーティーなアロマが魅力です。
フルーティーな甘みがある中に渋みも感じられる複雑な味わいです。
ポートワインは酸化に強いので、封を切ってからも長期保存が可能と言われていますが、ルビーの場合は酸化に弱いタイプとなります。
そのため、抜栓語は10日前後で劣化が始まるので注意が必要です。
酸素と接触しないようにバルセイロという大樽や、ステンレスタンクを使用して熟成が行われます。
トゥー二ー
ルビーよりも色が濃い、褐色のポートワインとなります。
これは酸化熟成されたことによって色合いが異なってくるのです。
味わいもルビーに比べるとまろやかで、柔らかい印象となります。
熟成を重ねるほど、味わいはまろやかになっていきます。
そのためトゥー二ーには、上位ランクとして熟成年数表記があります。
10年、20年といったように平均熟成年数が10年毎に記載されているのです。
抜栓後は1カ月程度であれば、品質をキープして保存が可能となります。
ルビーとは違って、酸素との接触面積がなるべく多くなるようにして熟成させます。
そのため小型の樽を使用し、酸化熟成を行います。
ホワイト
白ワイン系のポートワインとなり、食前酒として楽しまれているワインです。
赤系に比べると酸味を楽しめるワインとなります。
ルビーと同じように酸化には弱く、抜栓すれば10日前後で劣化が始まります。
熟成方法はルビーと同様、出来る限り酸化させないようにする熟成方法となります。
またホワイトの特徴である酸味を活かすように造られます。
特別のカテゴリー
ポートワインの中でもルビーとトゥーニーにはスペシャルカテゴリーが存在します。
そのスペシャルカテゴリーを紹介していきます。
ヴィンテージポート
ルビーポートの中でも最高峰のグレードがヴィンテージポートとなります。
普通のポートワインとは違ってヴィンテージ宣言されたものとなり、このヴィンテージ宣言は10年に数回ある程度の極めて限られたポートワインにのみ行われます。
ヴィンテージ宣言はブドウの収穫後に優れたワインをヴィンテージ候補として熟成させます。
その後ワイナリーが見極めた後にポートワイン管理機関に申請をして、認可を受けてヴィンテージポートと名乗ることが可能となります。
樽内で2年熟成させた後、瓶内でゆっくりと熟成させるため15~20年の時間が必要と言われています。
十分熟成させると濃い褐色となり、熟成させるほど澱が厚めに発生します。
力強いタンニンと、繊細なフルーツのアロマが感じられます。
レイトボトルドヴィンテージポート
ルビーポートの中でも極めて品質の高いブドウを選んで、4~6年間木樽で熟成させた後に瓶詰めされたものです。
深いルビー色が特徴的で、気品のあるフルボディとなります。
単一年度のブドウを使用して製造されるため、収穫年度によって味わいが異なる個性的なワインです。
このワインは飲む直前に瓶詰めされるものが良いタイプと、長期瓶内熟成が可能なタイプとがあります。
全てラベルに記載されているため、ラベルの確認が必要です。
コルヘイタ
ブレンドを特徴とするトゥーニーの中でも、コルヘイタは単年度に収穫されたブドウで造られます。
また最低7年以上の樽熟成が行われたものとなり、尚且つ収穫から4年後ポートワイン協会に申請を出して認定されたもののみがコルヘイタを名乗ることが出来るのです。
ラベルには必ずブドウの収穫年と瓶詰めを行った年号が表記されているので、確認してワインを楽しんでください。
熟成が長いものになるほど、味も香りも一体感のある高級な味わいとなります。
相性の良い料理
基本的に白は食前酒、赤は食後酒として楽しまれています。
そのため白は食前として単体でキリっと冷やしても楽しめますし、軽いおつまみと楽しむことも可能です。
アルコールが高めなので意が刺激され、食欲が増進するのです。
一方赤は食後酒として楽しむため、チョコレートの中でもビターなものやチーズなどと相性良くなっています。
他にもアーモンドやミントなどとサッパリ合わせるのもいいでしょう。
これは意外な組み合わせかもしれませんが、ブルーチーズなどの塩分の強いチーズとの組み合わせも喜ばれます。
甘味には塩分をさっぱりさせる効果がありますので、ちょうど生ハムとメロンの組み合わせのような効果が口の中で生まれるのです。
また、シガーを楽しむ方には、ぜひポートワインとのマリアージュも試していただきたいものです。
シガーは風味が強く、また刺激も残りますので通常のワインではワインの味わいが負けてしまいますので、ブランデーやウイスキーが合わせられます。
ところがポートワインは酒質も風味も強いためシガーとも合わせやすく、伝統的に楽しまれてるのです。
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