SOAVE(以下ソアーヴェ)は、イタリアのヴェネト州にあるソアーヴェ村やその周辺の村で生産される白ワインのDOC(一部DOCG)です。
ヴェネト州は15世紀から16世紀にかけてヴェネツィア共和国として発展し、ワイン造りはもちろん農業全般が盛んで小麦やトウモロコシ、コメなどが栽培されイタリア料理では重要なポレンタやリゾットの材料にされています。
日本のイタリア料理ブームでもいち早く気軽なタイプのワインとして紹介され、イタリアの白ワインといえばソアーヴェというくらいに知られています。
実際には古代ローマ時代から品質の良いワインとして評価を受けていて、中世になって更にブドウ栽培が盛んになったのです。
DOCよりも高品質であるDOCGワインに1998年に指定されたレチョート・ディ・ソアーヴェや、2002年にDOCGに昇格したソアーヴェ・スペリオーレもあります。
ソアーヴェを生産するヴェネト州のワインは、ほかにもヴァルポリチェッラやバルドリーノ、プロセッコなどの世界市場で人気のワインが多く、どれも高い知名度を誇っています。
そして国を挙げてワインの輸出振興をはかるのですが、ソアヴェの世界的ヒットは政府の思惑と完全に一致し、この成功にイタリアワイン界が色めき立つのです。
もともとイタリアはワイン文明の中心地であったし、ワインを支える豊かな食文化が根付いていました。
時代は食文化のライト化がすすみ、オリーブオイル主体のイタリア料理はあっという間に世界中を虜にします。
これに負けじとワインもバローロやバルバレスコ、ブルネッロディモンタルチーノやサッシカイアなどのスターワインが生まれます。
しかし、どうしたことかこれらのワインはどれも赤ワインで白ワインはいくつか評価の高い銘柄はあるもののマーケットは冷ややかで白のスターワインはいつまでたっても現れないのです。
逆に言えば、ソアーヴェに国際的なスター生産者が現れれば一気に風向きが変わることも予想できるし、環境的には十分に素地はあるのでワインファンとしては見過ごせないエリアといえるでしょう。
ソアーヴェの語源は対立する二つの意見に集約されます。
一つは6世紀後半にイタリア全土を支配するようになったランゴバルト王国のスヴェーヴィ家に由来するという説。
もう一つはイタリア語の古語にあるSOAVITAで、その”心地よい”という意味ではないかとする説があります。
どちらもはっきりとした根拠はなく、また資料も残っていませんのでお好きなほうで問題ありません。
現在、ソアーヴェはソアーヴェという村の周辺で生産されていますが、ソアーヴェのワインを生産することのできるコミューンは他にも多数あります。
Soave, Monteforte d’Alpone, San Martino Buon Albergo, Lavagno, Mezzane di Sotto, Caldiero, Colognola ai Colli, Illasi, Cazzano di Tramigna, Roncà, Montecchia di Crosara , San Giovanni Ilarione
このうち、SOAVEとMonteforte d’Alponeのコミューンがクラシコやスペリオーレの主要なエリアとなっていて、ほかのコミューンと違い火山灰質を含む水はけのよい土壌になっています。
まずはざっくりとソアーヴェのカテゴリーを確認しておきましょう。
ソアーヴェ→基礎的な呼称で上記のコミューンで生産されるワイン。多くはは並質のがぶ飲みワイン。アルコール度数は10.5%以上です。
ソアーヴェクラシコ→SOAVEとMonteforte d’Alponeのコミューンのうち、限定されたエリアで生産されています。世界的に評価を得ているワインも少なくありません。
ソアーヴェスペリオーレ→11.5%以上のアルコール度数が必要で、そのため日当たりがよく糖度の上がりやすい畑で造られます。あまり知られていませんが5%まで地元品種(Friulano、Cortese、Riesling Italico、Vespaiolo、Serprinaなど)のブレンドが認められています。
ソアーヴェ
世界で最も知られるイタリアの白ワイン
元々ソアーヴェは1980年代の日本のイタ飯ブームに先駆けて1960年代に始まった米国でのイタリアンブームでまずは火が付きます。
飲みやすく、すっきりとしていてさわやかな味わいはマーケティングの成功と相まって1970年代までにはキャンティを凌駕するほどの人気だったのです。
しかし、そのマーケティングは日本のものと変わらずフランス料理に対抗するもので、煎じ詰めればやっぱり
「親しみやすくリーズナブル」
という手法だったため、マーケットの経験が増えるにつれて徐々に人気に陰りが見えてきます。
そのうちに今度はピノグリージョと南イタリアのワインが台頭してきて米国市場のソアーヴェ人気にすっぽりととってかわるのです。
これではいけないとソアーヴェの上級ワインであるソアーヴェスペリオーレ(2002)やレチョートディソアーヴェ(1998)、ソアーヴェスプマンテがDOCGに認定されることになるのです。
評価の高い生産者として、
Gini,Ca’ Rugate,Cantina del Castello,Coffele,Inama,Pieropan,Pra,
などがあります。
後述しますが一般的なスティルワインのソアーヴェとは別に甘口のレチョートディソアーヴェがあり、こちらはイタリアを代表する甘口ワインとして高い評価を得ています。
ブドウの品種
ソアーヴェに使用されるブドウは、ギリシャが起源と言われているガルガーネガ種(GARGANEGA)を使用しています。
もともとはエミリアロマーニャとヴェネト一帯に栽培され、徐々にヴェネト州の中でもソアーヴェの特徴的なブドウとなった経緯があります。
強い樹勢をもつ品種で火山灰質から石灰質土壌まで幅広く耐性があり、ほおっておくと生産量が増えすぎるためキャノピーマネジメントが必須の品種です。
現在のソアーヴェは、ガルガ―ネガが70~100%、補助品種(シャルドネ、ピノビアンコ、トレッビアーノディソアーヴェなど)が30%までとなっています。
レチョート以外のソアーヴェは早飲みのワインが多く、リリースしたては洋ナシやパイナップル、アーモンドのようなアロマを持つワインに仕上がります。
ソアーヴェの特徴
ソアーヴェは軽めの辛口で、色は若いうちは緑がかった麦わら色です。
酸味がさわやかで果実味が豊かなのでサッパリした味わいが特徴の白ワインとなります。
火山灰の土壌(ヴォルカニック土壌)によってミネラルを感じる仕上がりとなっており、果物や白い花のようなアロマのフレッシュさが魅力です。
シャープな酸や完熟したレモンのような風味も感じられ、清涼感のある白ワインと言えるでしょう。
日本はもちろん世界中のスーパーで見かけます。イタリアの白ワインを代表する認知度でしょう。
コストパフォーマンスも良く、日本でも1000円台から購入出来る手軽なワインとなります。
レチョート ディ ソアーヴェ
ソアーヴェのワインを検討するにあたって、避けて通れないのがレチョートディソアーヴェ(RECIOTO DI SOAVE)でしょう。
レチョートはバルポリチェッラでも知られている製法の一種です。
収穫したブドウを陰干しすることで糖度を高め、その結果糖分やアルコールの高い酒質を持つワインに仕上げます。
(ただし、バルポリチェッラは陰干ししたブドウを辛口に仕上げたアマローネ、甘口に仕上げたレチョートの二つがありますが、ソアーヴェではレチョート(甘口)しかありません。)
収穫したブドウを陰干しにして糖度を高める手法は比較的広く知られています。
イタリアではシシリア島やパンテレッリーアのパッシートやトスカーナのヴィンサント、キプロスのコマンダリアなども同様の製法のワインです。
フランスでも同様の手法は知られていて、ヴァンドパイユと呼ばれる製法が似ています。
ヴァンドパイユはローヌではエルミタージュ、スイス寄りのエリアでも若干量生産されています。
レチョートディソアーヴェは、通常のソアーヴェよりも製法の難易度が高く、かつ、希少性もありますので大変に高価なワインになります。
一般的な辛口のソアーヴェとは違い、レチョートディソアーヴェは早くから品質の高さが知られていて専門家の評価も高いものが多いです。
イタリアの甘口ワインの中でもおそらくトップにあって、ねっとりとした甘口の味わいの中にアプリコットのジャムやアーモンドのシロップのような余韻は世界に誇る品質といえるでしょう。
イタリアンレストランやワインショップで見かけたときに、思い出してみてはいかがでしょうか。
相性の良い料理
辛口ワインなので魚料理との相性良く、アドリア海の魚介類と楽しまれています。
コストパフォーマンスも良いことから、デイリーワインとしてパスタなどとも相性良くなっています。
また、ヴェネト州は地方料理としてバッカラという干塩タラが有名です。
塩抜きしてほぐしたバッカラをなめらかなペースト状にしたバッカラマンテカートという料理が有名で、これがソアーヴェとの最高のマリアージュとされています。
また酸味がさわやかで丸みがあるので、刺身や生魚、生ガキとのマリアージュも良いでしょう。
生ガキはシャブリとのマリアージュが知られていますが、ソアーヴェとも最高のマリアージュです。
夏にはしっかりと冷やして(6~8度程度)飲むと、よりいっそう美味しく飲むことが出来ます。
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