アマローネ(AMARONE)は、北イタリアのヴェネト州ヴェローナ近辺で生産されるバルポリチェッラのDOCGワインです。
イタリアを代表する赤ワインの1つとも言われており、バルポリチェッラの伝統的な製法によって生産される高級辛口ワインのことを特に「アマローネ」と言います。
収穫したブドウを一度陰干しにして水分を蒸発させ、相対的に糖分やエキス分を高めてワインを造るので、酒質が強く、コクがあり、熟成することでほかのワインでは得られない素晴らしい変化をとげます。
最近では見かけなくなりましたが、イタリアワインの黎明期のときに品質の低いマグナムのバルポリチェッラも多く流通し、これがイメージとして定着していたのですが、さすがにこれではワインが可哀そうです。
バルポリチェッラはリーズナブルで飲みやすいのですが、軽快な渋みとフレッシュな果実味があり、本来はこれはこれで十分においしいワインなのです。
イタリアンレストランなどでグラスで売られているバルポリチェッラの多くは早飲みタイプなので、同じ地域ですがアマローネとは全く性質が違います。
なお、わかりにくいのですが、同じ地域にレチョート(RECIOTO)というワイン用語があります。
レチョートは耳たぶの意味で、ようするにそれくらいのいい具合にワインを陰干しにして造るワインのことで、これは甘口です。
それにアマローネという言葉がついたり、あるいはアマローネ単体で名乗ると辛口だという意味になります。
どちらも陰干しにしてエキス分を高めた果汁から造られるので強い果実味と飲みごたえ、味に深みがあります。
バルポリチェッラ アマローネ
イタリアワインはもともとはワイン文明の花形であって、環境的にも優れたワイン造りに適しています。
ところが、メッツォドリアといって、分益耕作という制度が1980年代まで農家の意欲や努力しようとする熱意そのものをそいでいたため、特に品質の高いワインがスポイルされていたのです。
イタリアのほとんどのブドウ栽培は物納小作制がつづき、農家はこの封建時代の遺物によって土地所有ができずに収穫されたブドウの半数を得るという従属的な地位にあったのです(もともとはすべて土地所有者のもので、収穫の半数を分けてもらうという形式)。
こうなるとブドウ栽培農家は土地所有者のいいなりになるのは仕方のないことでしょう。
そしておのずと収量の少なく手のかかる高品質なワインよりも、安定的な収入となるデイリーワインのほうがいいという風潮になるのです。
そしてネゴシアンと長期契約を結ぶことで生産量の安定した当たり障りのないワインが主流となり、これが折あしく世界的なイタリアンブームの時代に重なり、”イタリアワイン=飲みやすい”のイメージを決定的にします。
しかし、1980年代になって風向きが変わります。
戦後の工業化がいよいよ実を結びだすと、そうした得体の知れない小作制度に嫌気をさした農村人口が工業地域へと流出しだすのです。
当たり前でしょう。きつい農作業を続けても、いつまでたっても畑を持てず、それどころかわけのわからない大家に無条件に権利の半分を持っていかれるのです。
そして農村の空白化に危機感を感じたイタリア政府は、ようやくそれまでの小作制度にメスを入れます。
農家に免税措置をとり、土地所有者に有利だった契約形態をみなおし、相対的に農家を富ませる政策をとるのです。
こうなるとそれまでの農地所有者にとっては目先の利益に乏しく、場合によっては損の可能性もあるため自然と農地を二束三文で手放すのです。
では、だれがその見捨てられた土地を買ったのでしょうか?
もちろん、どんどん工業地域へ流出するほかの農家を横目に、黙々とブドウ畑と向き合ったブドウ栽培農家なのです。
これによって農家の意欲や熱意は向上し、ワインの品質も一気に向上します。
アマローネは20年以上前の古酒も多く出回っていますが、1980年代のワインをお飲みの際に、思い出してみてはいかがでしょうか。
ひょっとしたら、ブドウ農家がようやく農地を手に入れて、うれしくて仕方がない毎日を過ごしたヴィンテージかもしれません。
ブドウの品種
ブドウはコルヴィーナ種やモリナーラ種、ロンディネッラ種の3品種が使用されます。
アマローネは、厳選したブドウの粒を陰干し(アパッシメント)してから造ります。
このアパッシメントをしたブドウの内、甘口のものをレチョート、辛口のものをアマローネと定義付けています。
辛口に仕上げるためには高い糖度のほとんどをアルコール発酵させることになりますのでアマローネのアルコール度数は14度程度と高めになります。
10月ごろにブドウを手で収穫した後に、質の良いブドウのみを風通しの良い場所で2~6ヶ月陰干しが行われます。
その後2年以上の樽で熟成、更に6ヶ月以上の瓶内熟成を経ます。
非常に手間と時間を必要とし、陰干しや熟成期間も全て規定のある厳しい基準のワインとなっています。
バルポリチェッラ アマローネの特徴
ブドウの糖度が高いことからアルコールが高く、そのアルコールに耐えうる酒質を持ちます。
非常に濃厚かつ芳醇な味わいが特徴のワインです。
スパイシーなアロマと、ブドウや花の香りなどが凝縮された独特の芳香が引き立ちます。
これもやはり独特の伝統手法で造られることで、この力強く優雅な味わいが生まれます。
滑らかさや独特の旨み、コクの深さは世界中の赤ワインの中でもひと際違った存在感のあるものとなります。
リリースしたてのワインも味わい深いですが、前述のとおりアルコールも渋みも強いため長期の熟成にも向きます。
20~30年経たアマローネの熟成感はほかのワインでは味わえない素晴らしいものになります。
イタリアではアマローネは「思索の酒」と呼ばれており、特別な時や大切な人と飲むワインとなっています。
実際に熟成したアマローネを飲むと奥深さに吸い込まれるようで、色々考え事をするときや大事なひとと時を過ごすときにピッタリでしょう。
また、日本のイタリアワインファンにも熱狂的なアマローネファンも多く、ワインはアマローネ以外は飲まないという人もいるくらいです。
(もっとも、アマローネが好きという人はなかなかの飲兵衛で、なんだかんだでほかのワインも楽しんでいる)
相性の良い料理
ドライでパワフルなフルボディの赤ワインなので、しっかりとした重めの肉料理と相性が良くなっています。
ヴェネト州には馬肉を使った郷土料理があるため、馬肉とのマリアージュも最高ですね。
ビーフやラムを使用したシチューなども良いでしょう。
ジビエ料理やグリル、煮込み料理との相性が最適です。
コース料理の場合、アマローネは最後の一本になることが多く、そのためチーズとの相性も素晴らしいものとなります。
ワインブックススクールのお知らせ
ワインブックスメディアは、ワインブックススクール(WBS)が運営しています。
WBSは月額2200円のみ。ソムリエ・ワインエキスパート試験合格の可能性を最大化します。
オンラインなので、いつでもどこでも誰でも参加できます。
これを機会にご利用ください。
【月額月額5000円以下の店舗向けソムリエサービス】
ワインブックスのAIソムリエサービスはこちら→