日本でも人気のボジョレーヌーボーやイタリアのノヴェッロは、通常のワイン造りとはやや違った製法をします。
マセラシオンカルボニックと言って、通常よりも酸素との接触の少ない製法を用いることでフレッシュでさわやかな口当たりをもたらすのです。
もともとボジョレーはブルゴーニュ南部にあって、高級ワイン向けのブドウづくりに不向きな土壌です。
コートドールと違い花崗岩質土壌のボジョレーは品質的にどうしてもコートドールにはかないません。
そのためブドウ品種もガメイと言って病気や害虫に強く、大量生産型のブドウ品種が植えられていて、安い日常消費型のワインとして出荷されていたのです。
ただしこれではワインの消費は先細りで、なんといってもワインにウリがありません。
そこで考案されたのが新酒の概念で、収穫後できる限り早くワインにできて、フレッシュな口当たりのワインを考案します。
これがマセラシオンカルボニックなのです。
1980年代のフランスワインの拡大期に、新しい物好きの人間心理を利用して一大マーケティングを行い、世界に打って出たところ、これが大いにウケるのです。
マセラシオンカルボニック
ボジョレーなどの新酒の製法
マセラシオンカルボニックは、そのまま訳すとフランス語で”二酸化炭素浸漬法”となります。
通常のワインは収穫後、破砕して攪拌するなどの作業をしますが、マセラシオンカルボニックはそれをしません。
収穫したブドウを破砕せずにそのままタンクの中で放置し、タンク内に二酸化炭素を充満させます。
二酸化炭素は酸素よりも比重が重いの(空気1に対して二酸化炭素1.53)でタンクの下部にたまります。
これで理論上ブドウの果実は酸素との接触がなくなります。
酸素との接触がなくなることで酸化が抑制され、その結果大変フルーティーなワインに仕上がるのです。
ワインの劣化は酸素が原因?
ややわかりづらい部分ですので、もうすこし違った説明をしましょう。
↑の画像はイメージですが、タンク内に収穫したブドウがありますが、ブドウに接する空気は人工的に注入した二酸化炭素か、あるいはブドウの発酵によって自然に生まれた二酸化炭素が充満されます。
一般的に空気などの気体は個体と違って常に流動しているので通常では二酸化炭素単体では下部にたまりません。
しかし、極端な割合で二酸化炭素が含まれている場合は下部にたまります。
比重は二酸化炭素が重いので、自然に空気の下にたまり、結果として空気とブドウは分離されます。
空気とブドウが分離されるということは、イコール酸素と分断されることになり、その結果ブドウの酸化は理屈としてストップします。
酸化がストップすれば劣化は抑制され、ワインにフレッシュさがもたらされるのです。
ここで回りくどいのですが、酸素がワインにもたらす影響を押さえましょう。
酸素はブドウの果実と結合しやすい構造なので、触れているとどんどん酸化をしてしまいます。
リンゴを切って、その断面をほっておくとどんどん褐色化しますが、あれと同様の反応がブドウに起きてしまうとお考え下さい。
これらの酸化反応は、ざっくり言えば「人間にとって都合のいいものは酸化熟成、都合の悪いものは酸敗」の構図となります。
ワインにとっての酸化反応は、穏やかなものであればワインに深みを与えて香りが複雑になるなどのメリットがあります。
しかしボジョレーにとってみればフレッシュさがウリですから、酸化による複雑さや深みは邪魔な存在なのでしょう。
それであれば二酸化炭素でマスキングをして、できる限り酸化反応のない状態でワインにする、これがボジョレーと酸素の付き合い方なのです。
人工的なイメージ?
二酸化炭素を注入する手法が人的作業の介入だというイメージを嫌がる生産者もいます。
ワインは加水をせずに造られることから、自然に近い形で生まれることがよしとする生産者がおおくいます。
また、消費者からすれば、やはりできる限り自然にちかいほうがイメージがいいのは人情として理解できます。
そのため「二酸化炭素を人工的に注入した」という図式はネガティブなものなのです。
もっとも、マセラシオンカルボニックは人工的に二酸化炭素を注入したものばかりではありません。
ブドウは破砕をせずにタンク内で放置することによって下部のブドウは自重によって押しつぶされ、自然に発酵が始まります。
発酵が始まると自然と二酸化炭素が発生しますので、これによって二酸化炭素を外部から注入しなくても同様の効果が得られるわけです。
そこで、ボジョレーの生産者の一部では、「自分たちはマセラシオンカルボニックではない」という主張もあり、二酸化炭素を外部から注入する手法をとらないこともあります。
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