ワインリストの作成は、ソムリエや店長に一任されていることが多く、自分の好みを反映させられるためやりがいがある反面、売り上げに直結する重圧が伴うものです。
ワインリストの作成一つで売り上げが大きく向上する反面、誤ったワインリストを作ってしまうとそれだけで売り上げが落ち、さらに余剰在庫を抱えてしまうというリスクを抱えています。
特に小さなワインバーやレストランではワインリストの出来がそのお店の評価を左右することも多く、経営に直結することも考えられます。
実際に私が西麻布の専門店でワインリストを担当していたころ、他のお店のワインリストを見よう見まねでワインをセレクトし、ワインリストを作成していました。
その時のワインリストはただずらっと並べただけのもので、これではお店の個性や特色も伝わりづらく、修正するのにずいぶん苦労したことを覚えています。
幸いなことにそのお店は多くのお客様に利用されていたためワインの回転もはやく、半年するころにはお店の個性を反映したワインリストにすることができました。
しかし、もしお店が集客に失敗していたらとんでもない在庫を抱えていたことになり、いまでもぞっとします。
ここでは、これからワインリストを作成しようというあなたが、お店にとって必要とされるワインリストを作るために、未熟だった頃の私と同じ失敗をしないよう、そのポイントと根拠をすべて紹介します。
部分的にウェブマーケティングのはしりのようなこともご紹介しますが、基本的にパソコンさえあれば無料で誰でもできる手法をご紹介しています。
真剣に吸収していただければお店の売り上げにつながるばかりか、そのお店の価値向上=ブランディングにもつながることをお約束します。
ぜひ最後までお読みください。
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良いワインリスト作成とは?
分厚いワインリストの重要性
ワインリストというとどうしても↑の画像のように産地別にワインを並べ、価格を表示する普通のリストのようなものを考えるのがソムリエの人情というものです。
特に一生懸命勉強したソムリエであればその知識をワインリストに反映するべくスペルの間違いをなくし、正確かつ網羅的なワインリストを作ろうと躍起になるはずです。
もちろんこのようなワインリストはソムリエのあこがれでもありますし、グランメゾンと呼ばれるレストランではその在庫とセレクションセンスは必須でしょう。
しかし、ほんの一部のお店を除き、大部分の飲食店では在庫は少ないほうがいいし、とはいえワイン好きのお客様にも受け入れられるワインリストを作らなければならないのが実態でしょう。
例えば小さなワインバーであればオーナーソムリエであることも多いでしょうし、このような場合にこそ、より現実的なワインリスト作成が求められるものです。
その意味では、分厚く網羅的なワインリストはやや現在の経済感覚からは外れていて、本来作成するべきワインリストとは乖離があると考えるべきなのです。
良いワインリストを作成するメンタル
では逆に良いワインリストとはどのようなものなのでしょうか?
オーナーの指示があって作成するのであれば、そのオーナーの理想とするワインリストが良いワインリストということになります。
しかしそれではオーナーのいいなりですし、「じゃあオーナーが作れよ」ということになってしまいます。
もちろんオーナーや上司の意見は大事ですが、操り人形のようにワインリストを作成しているのであればソムリエとして先が思いやられます。
あなたが良いソムリエを目指すのであれば、ここは自発的に「あなたの考える良いワインリスト」に少しずつ修正するべきなのです。
とにかくマーケティングの意識を持っている
では具体的に何がいいワインリストなのかを検討してみましょう。
良いワインリストとは、本来であればお客様にどれだけ支持されるかにかかっているべきでしょう。
例えば客単価が5000円のお店なのに一本一万円以上のワインがメインになっているお店を想像しましょう。
この場合、お客様はワインリストを見て「いいワインリストだねえ」とは言ってくれるかもしれませんが、決して直接売り上げにはつながらないはずです。
伝統的なフランスやイタリアの地方料理を提供するお店なのに、世界中の今どきのワインを網羅したワインリストであれば、お店に一体感がないことをお客様にさらすようなものです。
重要なことは、そのお店はどのようなお客様に利用されていて、どのように使ってもらいたいのかを具現化するマーケティングの意識です。
売れているお店のワインリストはマーケティングの意識を常に持っていて、ただやみくもにワインリストを作成することは絶対にありません。
神経を研ぎ澄ませるように、現在のあなたのお店に求められているワインリスト像を具現化するのです。
何が求めれらているかを探る
では次に、具体的にどのようなワインがお客様にとって親近感があるのかを探ってみましょう。
これからは私が得意なウェブマーケティングの紹介になります。どなたでも無料でできますので安心して読み進めてください。
例えばフレンチレストランで、ブルゴーニュ料理を提供するビストロの場合です。
関連キーワード取得ツールで「ブルゴーニュワイン」と検索しましょう。するとこのように出てきます。
一つ一つのキーワードを検討してみましょう。
ここでユーザーはブドウ品種や生産者、具体的なAOCをサブキーワードで検索していることがわかります。
さらに下のほうに行きますとヴィンテージが並んでいて、「どの年がいい年なのか」「持っているワインの年はどのようなものなのか」を検索しています。
つまり、ブルゴーニュワインのお店のワインリストであれば、比較的にお客様の知識レベルは高く、生産者やヴィンテージまで細かくみられる可能性があるということを示しています。
次に、「トスカーナ ワイン」で検索してみましょう。
するとブルゴーニュワインとは違って生産者のサブキーワードはほとんどなく、いいとこDOCやDOCGの銘柄が検索されていることに気づくはずです。
そのため、ワインリストを見たお客さんに安心感を持ってもらうためには
・キャンティ
・ブルネッロディモンタルチーノ
・ヴェルナッチャ ディ サンジミニャーノ
・サッシカイア
を適宜入れ込まないといけないことになります。
もちろんコアなワインファンだけを相手にしているのであれば「マーケティングなんて知ったこっちゃない」というスタンスも取れるかもしれませんが、それはやや乱暴な意見といえます。
お客様はどこかしら安心感はほしいものですし、見ても何が何だかわからないワインリストを見せられても決して共感してもらえないものです。
お客様は勝手なものですので、知っているワインが何もない場合、「このお店はわかっていない」と拒絶反応を起こされる可能性もあります。
ワインのトレンドを比較する
次に、これから扱うワインがどのようなトレンドの状況なのかをマーケティングします。
例えばあなたのお店がイタリアワインを専門的に扱うお店であったとします。
このような場合は、できればイタリアワインがトレンド的に上向きで、これからのトレンドも期待できるものであってほしいものでしょう。
さらに、カリフォルニアワインとの比較をするとどうなのか、フランスワインとの比較はどの程度なのかを知ることができます。
グーグルトレンドで、どれだけの検索数があるのかのトレンドを見てみましょう。
まずはイタリアワインを見てみましょう。2004年から現在のトレンドを見ますと、穏やかな下降曲線であることがわかります。
これは全体的にイタリアワインへの注目が下がっていることを意味しますが、もう少し深い見方をすることもできます。
インターネットに一般の人が慣れてきたため、より細かいキーワードで検索した結果、相対的に下がってしまったという見方もできるのです。
そのため、ここですぐに「なんだ、イタリアワインは斜陽産業じゃないか」と思うのは早いです。
つぎに、カリフォルニアワインとイタリアワインの比較を見てみましょう。
カリフォルニアワインと比較すると、カリフォルニアワイン単体でも下降曲線ですが、イタリアワインと比べると注目度は低く、マーケットは小さいのではないかという仮説が成り立ちます。
では、ブルゴーニュワインとボルドーワインではどのような比較になるでしょう?
フランスワインとスペインワインでは?
このように大まかなトレンドをつかみ、比較することで「どのようなワインを選ぶべきなのか」がわかるのです。
いかがでしょう。それまではお店の中で「何が売れて何が売れないか」という物差しで判断していたことが、もっと大きな流れをつかむことができるようになるのです。
もっと他にもウェブマーケティングの方法はありますが、ひとまずここで次に進みましょう。
見た目に気を遣う
どれだけ高級なお店であっても、ワインリストを渡して渡しっぱなしというのではだめです。
ソムリエがしっかりアドバイスできるのであればいいかもしれませんが、忙しいお店ではそうもしていられないかもしれませんし、お客様は自発的に選びたいと思っている可能性もあります。
そのため、ワインリストとはベつにお勧めのワインをわかりやすく差し込むことも必要な工夫でしょう。
ラベルが差し込めればいいですが、そうでない場合は簡単なコメントを添えて味わいを想像しやすいように工夫するのも一つのアイデアです。
全てのワインをポップにするのは逆にお客様に何を選んだらいいのかわからなくさせる可能性があります。
そのため赤、白をそれぞれ5種類くらいでも問題ありません。
字体や見た目も考慮し、お店のイメージに合わせて作成しましょう。
自分の好みを1割は入れ込もう
ここまではどうすればお客様に受け入れてもらえるワインリストを作るのかをご紹介しました。
もちろんこれだけでもいいのかもしれませんが、それではAI(人工知能)がワインリストを作っても大差がないものになってしまいます。
最悪な場合、だれが作っても同じようなワインリストになってしまい、これではせっかく勉強したあなたの知識が無駄になってしまいます。
そこで、1~2割程度はあなたの情熱や思いをワインリストに反映させるべきですし、それが味のあるワインリストというものです。
「無機質で機械的なワインリストだなあ」と思ったのであれば、もう少し色を出してもいいかもしれません。
もっとも、あなたが一生懸命勉強した知識や情熱は、どれだけ隠そうと思ってもどこかに必ず現れるものです。
あまり心配しなくてもいいかもしれません。
まとめ
ワインリストの作成は、ソムリエの知識をお客様に押し付けるものではなく、お客様から見て注文しやすいか、共感を得やすいかが最大のポイントです。
そのためウェブマーケティングで何がお客様の知りたいことなのか、何がお客様にとって必要な情報なのかを知りましょう。
もちろん、マーケティング100%で作ってしまうと今度はあなたのいる意味がなくなってしまいます。
あなたの好み、ワインに対する思いや情熱はどこかに表すべきなのです。
ただしこの場合は押しつけがましくならないよう、本当に伝えたい思いは全体の1割から2割程度にとどめておき、受け取ってくれるお客様との出会いを待ちましょう。
その時があなたの本当の出番なのでしょう。
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