ニュイサンジョルジュ(NUITS SAINTS GEORGES)は、ブルゴーニュ地方のコートドニュイ地区の南部にあるAOCを産出する村です。
1936年にAOC認定を受けた、全体的にしっかりした果実味のワインで、97%の赤ワインと3%の白ワインを生産しています。
この村はディジョンとボーヌのちょうど中間にあって、その中継地点と言ってもいいかもしれません。
街そのものは隣接する他の村に比べて明らかに栄えていて、ネゴシアンやリキュール製造会社、ジュース工場もあればラベルの印刷工場もあります。
過去にはクレマンドブルゴーニュの醸造場があり、大方のクレマンはここで造られていました(現在は点在しています)。
19世紀の終わりに村の名前を決める際、ニュイサンジョルジュのワインの中でも一段高い評価を得るレ・サンジョルジュの存在がそのきっかけになったとされています。
指定栽培面積は270ha弱でそのうちの1級クリマが100haほどで、特級はありません。
規定アルコール度数はプルミエクリュで赤が14~11.5度、白が11~14度です。
ピノノワールならではの果実味とミネラルの印象は大変に上質で、ブルゴーニュワインの特徴がよく出ています。
コストパフォーマンスもいいものが多く、ブルゴーニュの赤を初めてお飲みの場合は、ニュイサンジョルジュのワインを強くお勧めします。
ワインを系統的に勉強すると、ニュイサンジョルジュにはグランクリュはないことを覚えることになりますが、これを疑問には思いませんか?
ヴォ―ヌロマネ村の隣に位置していて、立地的にも申し分ないのになぜ?と思う人は少なくないでしょう。
これには生産者間の根深い争いに原因があって、話がうまくまとまらない、という理由があったのです。
プルミエクリュの中には明らかにグランクリュに匹敵するワインもあるのですが、今のところ昇格の話は聞きません。
まずは、ここでワインの全体像を押さえてみましょう。
ニュイサンジョルジュ
ブドウの品種
ニュイサンジョルジュでは赤ワインを主に生産しており、ブドウ品種はピノノワールを100%使用します。
ブドウ畑はブルゴーニュのAOCの中では大きい方で、1等級畑(プルミエクリュ)が半分近くを占めています。
北側と南側で味がことなるのが特徴で、北側の丘はヴォ―ヌロマネと似た土壌となっていて、石灰質の砂利の混ざったシスト土壌となります。
一方で、南側では粘土が強めで斜面の上部は傾斜がきつくなっています。
そのため陽の光を強く受けるため骨格のしっかりしたワインが造られます。
少量の白ワインはシャルドネから造られますが、全体の量は3%ほどでほとんど見かけることはありません。
ニュイサンジョルジュは内気な村?
ニュイサンジョルジュのワインは、ヴォーヌロマネと地続きで、かつ土壌の性質も似ています。
基本的に石灰岩質と沖積土で、北端はほぼヴォーヌロマネと類似していて、実際にワインは似通った味に仕上がっています。
ボーヌのオスピスドボーヌにならったのか、オスピスドニュイサンジョルジュも存在し、オークションを毎年3月に行っていますが、おそらくほとんどに人に知られていないのではないでしょうか。
これは、ニュイサンジョルジュに特級のクリマがなく過小評価されているためで、マーケティング的にもやや内気な印象を受けます。
これはおべっかではなく、品質だけでは特級に格付けされてもそん色ないものがあるにも関わらず、損をしているきらいがあるのです。
実際のワインはミネラルの風味が豊富で土っぽさがあり、これが熟成すると芳醇な腐葉土やなめし皮のような香りに変貌します。
一部ネゴシアン物では価格に見合わない品質のものもありますが、上質のドメーヌものを選べばブルゴーニュワインの神髄を味わえる村と言えるでしょう。
グランクリュ不在の不思議
ニュイサンジョルジュには35のプルミエクリュがありますが、そのうちのいくつかは確実にグランクリュに認定されてもおかしくない品質のワインを生んでいます。
この村にグランクリュがないことの理由には諸説ありますが、もっとも有力な説は以下のようなものになっています(REMINGTON NORMANによる)。
1930年代にニュイサンジョルジュで最も腕のいい生産者であったアンリグージュ(レサンジョルジュの所有者)は、実際に畑の格付け査定にも深く関与していました。
そして、そのころのニュイサンジョルジュのワインは品質にばらつきがあって、これがグランクリュにとって致命的な欠陥だったのです(実際に1960年代までの評価はぱっとしなかった)。
正直者のアンリグージュは、この村にグランクリュがないことについては疑いがなく、そのためグランクリュへの申請は不適切と考え見送ったのです。
その後にワインは品質の向上がはかられ、いよいよレサンジョルジュのグランクリュへの申請が待たれるようになります。
しかしグランクリュへの昇格には大きなハードルがいくつかあり、もっとも大きなものが「すべての生産者組合の承認が必要」だということでしょう。
また、競合するほかのプルミエクリュの生産者の意見も盛り込む必要があるため、政治的な駆け引きの場となってしまうのです。
例えば特定のグランクリュが存在することでほかのプルミエクリュは相対的に低い評価を得ていることを認めることになってしまいます。
また、グランクリュとプルミエクリュでは税率が違うため格付けの変化を嫌う生産者もいるでしょう。これらが複雑に絡み合っているのです。
ワインユーザーからすれば、優れたワインがグランクリュに昇格するのは理にかなっていてマーケット的には歓迎するものかもしれませんが、このような理由から完全に足の引っ張り合いとなっている、ということなのです。
楽しみ方のコツ
ニュイサンジョルジュのワインは上質な渋みと果実味の豊富さから、ピノノワールの特徴のよく出た味わいを楽しめます。
熟成することによって複雑さが増し、血液のようなミネラルの印象も生まれます。
上質なワインなので温度は18度くらいに設定し、できれば大ぶりのブルゴーニュグラスにすこしずつ注ぎ、香りの広がりを楽しみながらいただきましょう。
南部と北部で品質が異なり、特に北部のヴォ―ヌロマネよりのワインはより鉄っぽく、熟成によってグランクリュと変わらないものとなります。
ミネラルの印象が強く、濃密な味わいのワインなので、肉料理とのマリアージュは最高です。
特に赤身の肉やジビエ料理、またレバーなどクセの強い内臓系料理との相性が良くなっています。
一部のプルミエクリュを除いてコートドニュイの中では比較的リーズナブルで、プレゼントとしても喜ばれるワインと言えるでしょう。
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